第15話 5on5 前編 最強の五人。
ワンピースカードをやっていて、一番楽しかった瞬間がなにかといえば、やはり非公認大会鬼ヶ島CSの5on5だろう。
チーム戦は楽しい。
仲間たちと共に戦う高揚感ったらないし、たとえ敗北したとしても、他の仲間たちが救ってくれる。勝利すれば感謝すらされる。喜びはひとしおだ。
普段なら三人チーム制が基本だが、鬼ヶ島CSは例外的に5on5。つまり五人チームの体制をとっていた。
試合申込後、僕はある思惑をうちに秘めていた。
『このメンツなら、優勝できるのでは』
期待してしまうほど、ワクワクさせられるメンバーだったのだ。
そうそうたる
チーム『播州べっちょない』
先鋒、殴ることしか能のない海。
黄緑ヤマト。
次鋒、ムラっけのやまさん。
赤紫ロー。
中堅、論理派メガネのダイジロウ。
緑ボニー。
副将、上腕二頭筋のドミネーター。
黒ルッチ。
主将、スクワットマスター黒色師匠。
黒モリア。
なんと僕以外、全てのメンツがフラシ複数回優勝者である、地元四天王だったのだ。
このチームなら都会勢や姫路勢ですら目じゃない。
惜しむべくはやはり僕の枠だろう。
仮に、僕の枠が地元最強のパパJr.であったのなら、優勝は確実だった。
だが彼はプレイヤーである前に高校生。勉強という名の強敵に挑まねばならず。
よって賑やかし要因が呼ばれたわけだが、そんな僕は意外に責任を感じていた。
優勝を狙えるメンツであるからこそ、僕がウィークポイントになってしまうのが嫌だったのだ。
負けたくない。負けたくない。
ウジウジしていた僕を見かねて、激励してくれたのは二人の男達だった。
まず一人目が、ムラっけのやまさん。
彼は下振れ期と上振れ期がハッキリと存在する。そのタイミングはスランプや環境、デッキ選択などの内的、外的要因によらず。
完全にランダムである。
負けるときはとことん負けるし。
ボーナスタイムに入れば敵なしだ。
なるほど、パチンコのような人である。
だからだろう、やまさんは『オカルト』に頼りがちである。
デッキはフルパラで固めるし、スリーブやマットも推しで揃えている。衣服でさえ推しTシャツだ。
愛の力が、上振れを呼ぶと信じているのだ。
そんなやまさんは、悩める僕にもオカルトを勧めてきた。
ヤマトのイラストがプリントされたTシャツを、わざわざ買ってきてくれたのだ。三千円で。
「これ着たら勝てるで!!」
あの笑顔を前に、着ない選択肢は僕に無かった。
次にパパ杯最弱の男、チャリンコさんである。
チャリンコさんは楽しんだ者勝ちを真に体現する、生粋のエンジョイ勢であるからして。
どうすればゲームがより楽しめるのかを心得ている。
「海くん、これあげるわ」
渡されたものは、素敵なイラストに『海』と言う文字が刻印された、オリジナル名刺だった。
チャリンコさんが僕のために作ってくれたのだ。
名刺をリーパラの裏に入れれば、対戦前の準備中、気持ちオシャレに名乗ることができる。
ちょっとした工夫だが、緊張続きの大会にあって、少しの息抜きを得られたのはでかい。
名刺はある種お守りのような役目を果たしていた。感覚派の僕にとってはありがたいことだ。
二人のおかげで僕は試合をポジティブに迎えることができた。
開幕4連勝という記録は、なので二人無しではあり得なかっただろう。
一戦目ペローナ。
当時は俺サム型が主流で、優秀なドローソースにより手札が一向になくならず。アドを取り続けることができる。それでもしょせんはライフ4。圧倒的パワーを前に小細工は通用しない。
二戦目新黒ルッチ。
何度でも言おう。僕の師は黒色師匠だ。黒対面は大得意である。
三戦目、四戦目、黒黄ルフィ。
当時最も勢いのあったリーダーのひとつだろう。
ルッチ対面ではほぼ負けず、トップtierであるローにも競り勝つことができる。
かなり高度なスキルを要求されるが、上手い人が握れば、理不尽なほどの試合展開を作ることができる。
ただ相手が悪かった。
ヤマト対黒黄ルフィの研究はすでに終えていた。
負ける要素はなかった。
この日好調だったのはなにも僕だけで無い。
まずは上腕二頭筋のドミネーター。
彼はマイナーリーダーばかりを好むのに、今日に限って新黒ルッチを使っていた。
なぜか。単純に、環境に刺さるリーダーを見繕うことができなかったから。
なのでtier 1を握らざるをえず。ルッチ使いであった黒色師匠から、リーダーを強奪した形なのだ。
交渉の際、彼の逞しい筋肉が行使されたとか、されていないとか。真相は闇の中だ。
人からリーダーを奪っておいて、負けるわけにはいかないよね。
ドミネーターさんはなんと、予選五戦全勝という輝かしい戦績を残した。実力は本物である。間違い無く今大会のMVPだ。
次に論理派メガネのダイジロウ。
フラシ、および8パックバトルの最多優勝者。
地元で最も素晴らしい戦績を残す、強者の一人だ。
理系出身ということもあって、脳内で計算式を組み立ててプレイをしているのだろう。毎ターンかなりの長考をしているが。差し出される
正解の暴力で相手を押しつぶすプレイスタイルは、理論上無敵である。
そんな彼と緑ボニーの相性は凄まじかった。
まずもってリーダー効果でレストにするキャラを間違えない。ドンの振り分けも間違えない。
9ゾロ、ホーディ、10ドフラ、8キッド、8ロシナンテ。
様々なプランをもつボニーにおいて、いつだって的確な進行を取捨選択する。
論理派が握るロジカルなデッキ。
まさに鬼に金棒である。
ダイジロウさんはボニーでもフラシ優勝を果たしていた。
慣れないモリアを握らされた黒色師匠と、オカルトが意味をなさないと証明したやまさんの二人は苦戦していたが。
好調な僕と、負けられないドミネーター、理論武装のダイジロウ。三人の奮闘により、チームはどうにか予選突破を果たした。
次回『5on5後編 ホーディに笑いホーディに泣く』に続く。
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