第14話 それって社会人としてどうなん?

 姫路勢の方たちが主催となって行われる、3on3の大規模非公認大会、『ロギアCS』。


 僕ら地元勢の多くも参加する今大会、チームメンバーは以下の3名だ。


『海、チャリンコ、カス』


 チャリンコさんは以前登場した、パパ杯最弱の男。カスは僕の同級生だ。


 久しぶりのチーム戦と言うこともあり、なかなか気合が入っていたが。そんな僕とは裏腹に、カスが一向に会場へやってこない。


 いよいよまずいと思った僕は、カスへ電話をかける。


「ううう、わりぃ、今起きた」


 二日酔い丸出しの声。僕は呆れて言葉も出なかった。


 時刻はすでに試合開始前。いくらカスの家が会場から近いといえど、間に合うのは不可能だった。


「とりあえず走れ!!」


 カスを急がせる傍ら、チャリンコさんを見やる。

 僕はまだいい。カスとは同級生だ、カスがカスであることは理解している。


 けれどチャリンコさんにとって、カスはさほど面識のないクソガキだ。


 そんなやつのせいで迷惑を被っている状況がいたたまれなく。僕はチャリンコさんへの謝罪に終始した。


「いいよぜんぜん。誰でもミスはある!」

 気丈に振る舞っているが、彼の気持ちが萎えていたのは明らかだった。


 そうこうしているうちに試合は開始。

 カスは不戦敗となり、チームが勝つには僕とチャリンコさん双方の白星が必要だった。


 せめてカスの分も頑張ろう。

 そう開き直った僕はどうにか勝ちを納めたが、チャリンコさんは落ち込みがプレイに出てしまったのか、初戦敗北となった。


 ここでようやくカスが会場に到着する。


 平謝りするカスに対し、チャリンコさんは寛容な態度を示した。


「気にせんでええよ!」


 許されたと思ったのか、ホッとした様子のカス。


 彼の優しさに漬け込むカスが、僕にはどうも気に食わなかった。


「チャリンコさん! カスに言いたいことあれば言ったってください!!」

「俺からもお願いします……」


「なら、一言だけ言わせてもらうわ。それって社会人としてどうなん?」


 今ではチャリンコさんの代名詞となった、『それシャカ』の爆誕である。


 チャリンコさんは以後いくどとなく、『それシャカ』を連発するようになった。決め台詞ってやつである。


 そんなことはさておき、カスの処遇である。


「お前、ただでさえ迷惑かけてるんやから、次負けたらヤバいで」


「しゃーない。頑張って全部勝つわ」


「おう、俺も頑張る」


 せめてチャリンコさんにとって、楽しい大会で終わってもらおう。決意を新たにした僕たちは、互いに4-1というまずまずの戦績で大会を終えた。カスは本当に全試合勝ってみせたのだ。


 だが、チームはほぼ最下位であった。

 チャリンコさんを見る、その表情は絶望だ。


 0-5。

 チャリンコさんは全敗した。


 ここで一つの疑問が浮上する。

 チームが負けたのは誰のせいか。


 遅れたカスのせいか。

 負けたチャリンコさんのせいか。


 もちろん誰のせいでもない。

 チーム戦という形式上、チームの敗北はチームのせいだ。


 頭ではわかっていても、疑問がぐるぐると二人の間で錯綜していた。


 とても。とぉっても、気まずそうだった。


 ただ一人、何も悪くない僕だけが、光景を愉快に眺めていた。


 ひっひっひ。


 いい大会になった。


 次回『激アツ5on5へ。アベンジャーアッセンブル』に続く。

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