第8話 初めての非公認大会優勝、魔王討伐
四天王の一角、マイナーリーダー使いのドミネーター。
彼は地元随一の感覚派プレイヤーであり、普通の人なら到底考えられないプレイングや構築センスで環境を荒らしている。
サカズキ時代においては廃れて久しい『白ヒゲ』でフラッグシップバトルを複数回優勝。
現行の9段環境ではもっぱらベガパンクやハンコックで、tier1たちに下剋上を決めていた。
tier 3を使わせれば彼の右に出るものはいない。
そんな彼に僕は謎のシンパシーを抱いていた。
tier 3使い仲間として
パパ杯ではなぜか同チームになることが多いし、極めつけは小、中学校が同じという共通項もあった。
普通に地元の先輩なのだ。
そのため界隈の中では比較的打ち解けるのが早く、僕もドミネーターさんに懐いていた。
そんな彼から、あくる日連絡が届いた。
「一緒に姫路の非公認大会でてみいひん?」
ワンピカの大会は、公式大会と、店舗や個人が運営する非公認大会で分かれている。
公式大会は誰でも無料で出られるため、ライトなプレイヤーも多いが。
非公認では参加費がかかるケースがほとんどで。お金を出してまで大会に出たがるヘビーユーザーが多く、敷居が高いイメージをもつ。
だが僕は先日、黒色師匠とやまさんの三人で準優勝を決めたばかり。
有頂天になっていたため、二つ返事で了解した。
姫路まで送迎してくれるとのことで、二人でドライブがてら遠征へ出かけた。
道中、いろんな話をしたが、特に印象深いのはドミネーターさんのワンピカに対するモチベーションだ。
「俺、カード金でしか見てないで」
ワンピカプレイヤーの中には、初期BOXの転売や、高額プロモカード目当てで参入してきたプレイヤーも珍しくない。
ドミネーターさんもその一人で、最初こそロマンスドーンの転売目当てでワンピカを触っていたが、意外に初めてのTCGが面白く、ハマってしまった口だ。
僕は嬉しかった。
そういった層も取り込むことができる、ワンピカの魅力を再確認できたからだ。
当然ドミネーターさんは原作履修などしておらず、アニメも見ていない。
キラキラカードを眺めても、頭の中では金額に変換されている。
面白いのがここから。
ドミネーターさんは入り口がお金なこともあって、しっかりとワンピカで収入を得ていた。
映画特典のゴードンが高騰することを見越して、事前に買い漁り、赤紫ローが隆盛を極めると購入金額の三十倍近くで売り払ったり。
フラッグシップの優勝プロモもすぐには手放さず、高額化したタイミングで捌く。
ボックス争奪戦で優勝したときの箱を、なんと開けずに持ち帰ったりした。夢のないやつ!!
利益は数十万にのぼったことだろう。
合点がいった。
ドミネーターさんから感じる、謎のうさんくささの正体に気づいたのだ。
この人はワンピカで
商売人なのだ!!
僕は商売人特有の審美眼を、怪しく感じていたのだ。
全くいろんな人がいておもしろいね!
余談はさておき非公認大会である。
参加者こそ八人と小規模だが、優勝すればそれなりの景品がもらえる。
メンツはドミネーターさんから始まる猛者揃いで、少しアウェイ感を覚えていたが。
対面は一回戦赤ゾロと、二回戦サカズキだった。
ここにきて先日の3on3準優勝が功を奏した。
赤ゾロの立ち回りはやまさんから。
サカズキは黒色師匠から倒し方を伝授されており。僕は二人の知恵を借りて勝利した。
次はいよいよ決勝戦である。
対戦相手はなんとドミネーターさんすら敵わなかった強敵、『魔王』。
魔王はおそらく、全プレイヤーの中でも上澄みに位置する強者。フラグシップバトルは十回近く優勝しており、それだけ聞くと尊敬に値するが。
どうやら複垢、代走団体に所属しており、ゆえにフラシ参加回数自体もずぬけて多かったそうだ。
まさにプロモ目当てのバウンティハンター、海賊である。
使用リーダーはサカズキ。ガチである。負けるわけにはいかない。
道中は黒色師匠との特訓の成果がいき、有利に試合を進められたが、さすがは魔王、とんでもない切り札を隠し持っていた。
ヤマトには一つ、他にない特徴がある。
全ドンリーダーアタックをする手前、手札を切ってキャラを出すことが少ない。かつトリガー期待でライフを無理に守ることもない。
ようするに手札が溜まりやすいのだ。
あの時は確か、10枚ほどあっただろうか。
魔王は最悪のカードを場に出した。
6弾環境で、しかもサカズキでそのカードを使う人は非常に少なく、僕はワンピカ生で初めての経験だった。
後々効果が評価され、青色リーダーの構築に組み込まれることも増えたが、当時は一切出回っていなかった。対策のしようもなかった。
『4プリン』である。
効果は知る通り、『手札を全て山札へ送られ、5枚になるようドローさせられる』
温存していたキーカードはことごとくデッキへ送られ。
手札5枚分のハンデス。溜まったカウンター値もごっそりと削られた。
魔王は残りドンでブロッカーを展開し、トリガー警戒であえて殴らず次のターンでリーサルの構えだ。
上手い——。
一方で僕はレスト札欠損。
相手はブロッカー複数。
エースカードであるホーディがなければ、勝利が不可能な状態であり、先程プリンでデッキに送られた。
絶体絶命、ゆえに覚醒のとき。
僕のターン。ドロー。
(BGM 熱き決闘者たち)
『トップホーディ解決』
僕は魔王に勝利した。
海、初めての優勝である。
次回『初めてのスタバ優勝。恩を仇で返した男』
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