第200話
限られた時間の中で久し振りに、一緒に食事を作って、好きな映画を見たりした。
たわいのない話をして、微笑みあって、キスをして、抱き合って。
その度に、私はやっぱりこの人のことがどうしようもないくらいに好きなんだと痛感した。
そんないつもと変わらない年明け。
いつもと同じ、不安定な灰色の空だった。
だけど、ずっと変わらない空なんてない。
「ありがとうございましたー!」
まるで幼稚園の先生みたいな可愛らしい笑顔の店員さんに見送られ、お店を後にした。
結構な量の猫のご飯が入った紙袋は、ずしりと重たい。
ネットで買えば家まで届けてくれるからその方が良かったのかもしれないけれど、お礼として渡すものだからそれだと何となく気持ちがこもっていないような気がして、こうしてお店まで出向くことにした。
貰う側からすれば別に同じなんだろうけれど。
永瀬部長の件ですごく迷惑をかけてしまった穂高さんに、お詫びとお礼に何かさせて欲しいと言った。
すると穂高さんがすぐに口にした「じゃあ俺と結婚して」というふざけた冗談をスルーして再度伺うと、「何かご飯作って」と言われた。
森さんは料理が苦手だから食事は自分で作ると言っていたから、1日でもその仕事を私に補って欲しかったのかもしれない。
けれど食事を作るとなると、私の部屋か穂高さんの部屋のどちらかで、自分の部屋で作った場合は穂高さんを部屋に入れることになる。
かと言って再び穂高さんの部屋にお邪魔するのも・・・・といろいろ考えた結果、お弁当を作って渡すことにした。
お弁当ならきっと仕事の都合で食事の時間も不規則であろう穂高さんも、好きなときに食べられるし。
けれどお弁当だけというのもなんだか申し訳ない気がして、思いついたのがノラちゃんのご飯だった。
ノラちゃんの好きなチキン味を大量に買い込んで、これと一緒に渡すことにした。
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