第198話
「そんなに青空が見たけりゃ、今度快晴の日に俺が教えてやるよ」
「え?」
「“今日の空見てみろよ”って」
「・・・・それもなんだか違う気がしますけど」
「あ?同じだろ」
自ら見上げた空が、青くなければ意味がないのに。
穂高さんの声のトーンはいつもと変わらない。
だけど本当は懸命に、私の心を上げようとしてくれていることは伝わってきたから。
「じゃあ今度、教えてください」
私もその気持ちに応えたいと思った。
思えばいつも、ぎりぎりだった。
いつ壊れても不思議じゃない。
希和のそばで幸せを感じながらも、同時にいつもどこかで怯えているんだ。
いつか来るであろう、この恋の終わりを。
それは、いつ降り出すのかわからない雨と似ていて。
いつか薄暗く分厚い雲から晴れ間が覗くことよりも、雨の降る確率の方が何倍も高いことを知っているから。
綺麗な青空が見たい。
だけどそれ以上に、雨が降ることが怖い。
だからいつもと同じ変わらない灰色に、ほっとしてる自分もいるんだ。
どこまでも続く重たい曇り空。
雨はまだ降らない。
今は、まだーーー・・・・
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