第197話

「なんだか意味がよくわかんねぇな」




・・・・うん、そうだよね。



自分でも何が言いたいのかよくわからないし。





きっと深すぎる夜のせい。



こんなにもくだらないことを、つい口にしてしまったのは。








「けど、雨女よりいいんじゃねぇの?」



「えっ・・・・そうですか?」



「だってほら、運動会とか遠足の時なんかに雨が降らないようにって、てるてる坊主作って祈ったりしただろ?」



「あー、はい。してましたね」




私は作ったことがあるけれど、穂高さんもあるんだ。てるてる坊主・・・・。



なんとなく、意外だ。




「曇りならセーフだってみんな喜んだだろう?雨さえ降らなきゃ良かったんだから、かえって簡単に晴れるより曇りのほうがてるてる坊主への感謝もデカイかもな」



「すごくポジティブですね、穂高さんって」



「史がネガティブに考え過ぎんだよ」






そうかもしれない。




一体いつからだろう?



こんなにも自分に自信がなくなったのは。





前にカエちゃんにも言われたけど、昔はそうじゃなかった気がする。どちらかと言うと、もっといろんなことを前向きに捉えられるタイプの人間だったように思う。





・・・・心当たりはあった。



多分きっと、希和に本気の恋をしてからかもしれない。



そして、希和の隣にいつも並ぶ、絶対的に敵わないお姫様を目の当たりにしてからだと思う。



比べたって仕方ないのはわかってる。



むしろ比べることさえもおこがましいような。



だけど元からほとんどなかった自信を、さらに失くしていくのを止められなかった。









「史?」





「・・・・確かに私がちょっとネガティブなのかもしれないですけど。それでも穂高さんが短絡的というか、絶対に人の平均以上にはポジティブ思考の持ち主ですよね」




「なんか俺がバカみたいに聞こえるんだけど」




「そんな風には言ってませんよ。・・・・ただちょっと、羨ましいなって」





穂高さんといると、自分が何にこれほど心を沈ませていたのかさえもわからなくなる。



こんな風にマイナスに捉えそうなすべてを上手く切り替えられたなら、どんなに楽だろうか。



そう出来る穂高さんが、すごく羨ましいと思った。




だけど穂高さんもあれほどの辛い過去があったんだ。きっとこの世の終わりみたいな苦しみを味わって、それを乗り越えたからこそ、今の穂高さんがあるのかもしれないとも思う。

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