第189話

「けど念の為、1人では会うなよ?」



「え」



「当然だろ。会うのが昼間で人気のある場所でだったとしても、さすがに危険すぎる」





普通に1人で会うつもりでいたけど。



・・・・って言ったら、またすごい睨まるんだろうなぁ。





「彼氏についていってもらうのが一番いいと思うけど、無理なら俺がついてくから」




「あの、じゃあ、お願いしてもいいですか?」





私の即答に、穂高さんは一瞬何か言いた気な複雑な表情を見せたけれど、





「ーーーわかった」




そう承諾してくれた。




希和に頼ろうなんて気はまったくなかった。



何故かと聞かれると、それに関しては即答はできないのだけど。



・・・・・・なんとなく頼れないと思った。




かと言ってただのオトナリサンでしかない穂高さんに、こうもあっさりお願いしてしまったのも不思議だ。



今日が一応“初対面”だというのに、この人のことをすっかり信頼しきっている自分に驚いてしまう。












「そういえば、お仕事のほうは大丈夫なんですか?」





いつも起きているであろう時間帯を知る限りでは、たぶんこの人は夜仕事をしていることが多いんだと思う。



だから本来なら今は仕事をしている時間なのかもしれない。




いつのまにかデスク前の椅子へと移動していた穂高さん。



その目の前に置かれた起動されていないパソコンを見つめながらそう尋ねた。





「大丈夫、ではないな」



「えっ」



「気にするな。大丈夫なときなんてあるときのほうが稀だから。けど最終的にはいつもなんとかなってるし」




それってつまり、常に締め切りに追われてるってことだよね・・・・



なんか漫画家さんのイメージ通りかも。



身なりなんて気にする暇もなく徹夜続き、みたいな。



さきほどと違って、今は長い髪を後ろでひとつに結んだからまだすっきりとした顔には見えるけど。それでもやっぱり普通のサラリーマンとは明らかに違う姿だ。





「すごく大変なお仕事なんですね・・・・」




パソコンから穂高さんに視線を移し、そう納得していた。

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