第181話

「今からここに誰か来てくれる人はいるか?」




え・・・・・・?




「史が信頼できて、朝まで一緒についていてくれる人」




今から?朝まで?




「友人か家族か、彼氏」





彼氏・・・・・・って。



希和は今日から海外に出張だ。



カエちゃんだって寧々がいるからこんな時間に出てくるなんて無理だし、親友の杏里がいるのは地元である隣県だ。いつでも飛んできてくれるとは言ってくれていたけど、現実的には不可能だ。





「・・・・いません」




私の答えに、穂高さんは小さく息を零した。




「あの、私なら1人でも大丈夫ですよ?」




けれど私の声など聞こえていないかのように、深く考え込むように黙ってしまった穂高さん。



暫くして再び口を開いたかと思ったら、その発っせられた言葉に私は固まってしまう。






「このまま俺の部屋に連れてくから」





え・・・・・・・・




「ええっ?!」




俺の部屋って、それはさすがにちょっと、いやかなり困る・・・・!




「あのっ!本当にもう大丈夫ですから!私は自分の部屋に、」



「両膝とその手のひらも。手当てしないとマズイだろ」



「これくらい自分でやりますからっ」




こんなのただのかすり傷だ。



だってさすがに男性の一人暮らしの部屋に、こんな時間にお邪魔するのはどうかと思う。



付き合っている人がいるなら尚のこと。


それくらいの常識は私も持ち合わせている。




私は穂高さんの腕から逃れようと、足をばたつかせた。




「おいっ、大人しくしろ!心配すんな、部屋にいんのは俺1人じゃねぇよ」



「え・・・・」




1人じゃないって、



「あ、もしかして森さんが来てるんですか?」




森さんは深夜でも時間に関係なく訪れることもあるそうだし。



「だいたいな、心配しなくてもこんな手負いの女を襲うほど鬼畜じゃねーから」




・・・・それは、ちゃんとわかってますよ。



穂高さんはいい人だってことくらい。



だってただの隣人でしかない私のことを、わざわざ助けに来てくれたのだから。

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