第153話

「魅力的だよ、十分」



「・・・・本当?」



「本当に。これでも必死で耐えてるんだけど」



「だったら、」



「でもムリ」



「え・・・・」





そんな冷たい言葉をぴしゃりと吐かれた次の瞬間、私の顔は木嶋さんの胸に埋められていた。





「確かに男は相手に気持ちがなくても抱ける。最低だけど俺も自分の欲求の為にそうした付き合いもしてきたし。けど皆原さん相手には無理だと思った。しちゃいけないって」




「どうしてですか・・・・?私はそれでもぜんぜん構わないのに」




経験が少なくたって、木嶋さんに抱かれたいって思うのに。




「めちゃくちゃにしてくれていいんです。木嶋さんの好きなように。お互いに快楽を得られれば、ただそれだけで私は・・・・っ」




くぐもった声で懸命に訴えた。



心までとはいかなくとも、身体だけでも木嶋さんが満足してくれたなら。



そうして私も好きな人に触れられるから。



心はなくとも、それだけで幸せなはずだ。




すると頭上から大袈裟なくらいに、はぁーっと長く深い溜め息が聞こえた。





「だから・・・・!ねぇ何これ?やっぱ皆原さんって純情ぶってるだけで、実はすっごい計算高い女なわけ?」



「ちがっ」




そう否定しようとして、こうして家に誘い込んで自分から誘ってるわけだから、純情な女では確実にないなと思い直す。



今この現状は計算間違いなんだろうけど。





「・・・・そうです。そんな女なんです私。だからどうか遠慮せずにヤっちゃってください」




私がきっぱりそう言うと、再び今度は短く息を吐いたあと、木嶋さんの私を抱きしめる力が何故かぎゅっと強まった。





「皆原さんってさ、意外と、その・・・・」




「え?」




「ホント、まいったな」





え・・・・



その後にぽつりと落とされた言葉に、胸がぎしりと痛んだ。



困らせるつもりじゃなかったのに。



どうしよう。私はまたなにか間違えてしまったのかな。



自分勝手な想いを押し付けすぎてしまったのかな。





「あの、ごめんなさーーー」

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