第152話
「ーーー木嶋さん。
女だってそれなりに欲ってあるんですよ?」
私は木嶋さんの頰にそっと触れて、再びゆっくりと形の綺麗なその唇に近づいた。
キスをしている間、木嶋さんからも、その先を求める熱を感じとっていた。
感情からではなく本能で、女を求めていた。
木嶋さんは誠実な人だ。
いくら気持ちがない付き合いだとしても、浮気なんてしてないことはわかってる。
最低でも木嶋さんは、私と付き合ってから半年以上は女性に触れていないことになる。
だから男として私を、“女”を求めてしまうのは当然のことだと思う。
私はたとえどんな理由でも構わない。
貴方が私に触れてくれるなら。
もっと奥深くまで、私も貴方に触れたかった。
「・・・・驚いた」
目的地に辿り着く前に、木嶋さんの指先が私の唇に触れた。
「見た目からは想像できない、すごいことを言うんだね。皆原さんって」
そう言って木嶋さんは、ふっと小さく笑った。
「わ、私は本気なのに・・・・!」
必死で誘ってるのに、キスを交わした挙げ句に笑うなんて。
さすがに酷いよ。
「ごめん。けど過激なこと言うわりにはさっきのキスもまったく慣れてない感じだったし。今だって・・・・ほら」
木嶋さんの頰に乗せていた私の手を、上から包み込むように木嶋さんの手が重なった。
「すごく震えてる」
「・・・・っ」
「無理しなくていいよ。っていうか無理しないで」
握った私の手を自分の頰からゆっくり離すと、木嶋さんは私の頰に触れるだけのキスをした。
今はもう、頰なんかじゃ物足りないのに。
「・・・・確かに私は経験は少ないほうなので、こういうことには慣れてないです。でもセックスは初めてじゃありません」
はっきりと木嶋さんの口から聞いたわけじゃないけれど、浅見先輩と別れたあとに付き合った何人かの女性とは、キスも、その先の行為だってしていたはずだ。
それなのに。
「他の人とは出来ても私とはセックス出来ませんか?私じゃ、魅力が足りないですか?」
キスの最中、確かに木嶋さんは欲情していたはずだった。
その欲を抑えきれないほどの、理性が吹き飛んでしまうくらいの魅力が、私には足りないの?
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