第148話
あまり張り切りすぎた内容だとすごく待ち構えていたみたいで恥ずかしいなと考えて、和食中心のシンプルなメニューをいくつか並べた。
それでもやっぱりつい張り切ってしまい少し作りすぎてしまったのだけれど、木嶋さんはすでにそれをほとんど完食してくれる勢いだった。
「それに、当たり前だけどやっぱり外食よりもこうして家での手料理のほうが身体にもやさしいなって久しぶり見に染みたよ。最近こういう家庭料理食べてなかったから」
「あの、でも木嶋さんもご自分で作られるんですよね?」
何度か重ねたデートで得た、木嶋さんに関しての希少な情報のひとつだ。
「作れるときはね。といっても本当に簡単なものでこんな手の込んだものじゃないけど。それも最近はまったく。仕事で遅くなることが多いから、コンビニか酒だけ飲んで寝ちゃうことがほとんどになってるかな」
「えっ、ダメですよそれ!体に悪すぎます」
「うん、わかってはいるんだけどね」
コンビニってのも心配なのに、お酒だけの日もあるだなんて。そんなのこんなにハードに働いてる人にはより危険過ぎる。
「そのうち倒れちゃいますよ?私、こんなのでよければいつでも作りますから!本当に毎日でも全然大丈夫ですしっ」
「いや、・・・・さすがに毎日はちょっと」
木嶋さんの困ったような笑みに初めて、自分の失言に気づいた。
「っすみません、私・・・・!」
何言ってるんだろう・・・・!
毎日手料理を作ろうだなんてそんなの重たすぎるし、木嶋さんには迷惑でしかないのに。
気をつけていたつもりが、また自分勝手な感情を押しつける発言をしてしまった。
2人の距離は付き合い始めた頃と変わらないのに、私の想いはどんどん増すばかりで。この先どこまで膨れ上がるんだろうという不安も正直ある。
だけど一緒にいたいのなら、自分の気持ちは絶対に抑えなきゃ。
私だけが一方的に好きなことは木嶋さんもすでに知る事実で、だけど木嶋さんが負担に感じないように付き合いの上では出来る限り平衡でいなければと思うから。
好きの重さを悟られてはいけない。
「毎日だとさすがに皆原さんに悪いから、外食デートじゃなくて、時々こうして作ってもらってもいいかな?」
「・・・・もちろんです」
ああ、やっぱり気を遣わせてしまった。
情けないしすごく申し訳ない。
木嶋さんのやさしさに、胸が詰まって泣きそうになる。
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