第138話

「・・・・他に好きな人ができるまでって言ったけどさ」





木嶋さんは真剣な表情で、私を真っ直ぐに見つめて言った。







「ずっと好きな人がいるんだ」




「え・・・・」







お付き合いしてる人がいないと聞いただけで、好きな人がいるかどうかは確認していなかったと、今さらながらに気づいた。







「そう、なんですか」





とっくに振られているくせに、それでもまた新たな鋭い矢が胸を刺して痛む。




だけど、ずっとだなんて。



それって木嶋さんの片想いってことだよね?




木嶋さんでも振り向いてもらえない女性がいるなんて、私には信じられなかった。






「皆原さんが真剣に気持ちを伝えてくれたから、僕も正直に話すよ」




「え?」




「好きな人、というか、正確には忘れられない人がいるんだ」




「え・・・・・・・・」









ーーーー忘れられない人?







「恥ずかしい話なんだけどね。その相手というのが実は大学卒業間近で別れた彼女なんだ」





大学のときに別れた?




・・・・それって。






「あの、」



「ん?」



「その彼女さんとは・・・・長くお付き合いしていたんですか?」



「そうだね。高校1年のときからだから、7年くらい付き合ったかな」







やっぱり、



ーーーー・・・・浅見先輩だ。








「もう別れて4年も経つし、彼女はすでに他の男性と結婚したっていうのにね」





木嶋さんは自嘲的に笑った。






浅見先輩が穂高先輩と別れたあと、地元に戻って別の男性と結婚したことは知っていた。



だけどまさかその後もずっと木嶋さんは、浅見先輩を想い続けていたなんて・・・・





「皆原さんが僕の何を見て好きになってくれたのかは知らないけど・・・・、俺はこんなにも未練たらしい男なんだよ」







木嶋さんは初めて自分のことを“俺”と言った。




だから尚更、本当に素の木嶋さんの言葉なんだと思った。





木嶋さんの心はあの頃と変わっていなかった。






今でもあの“お姫様”のことを、



浅見先輩のことが好きなんだーーー・・・・

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