第132話

「今日すっごく不細工な顔してない?」




三上さんが失礼な言葉を容赦なく浴びせる。




「しかも朝より悪化してる気がする」



「・・・・すみません」




私は顔を隠すように俯き加減で、パソコンに数値をひたすら打ち込み続けた。







昨夜はほとんど眠れなかった。




ずっと気づかないフリをしてきたけれど、こんな状況になってやっぱりと思い知らされた。



私はまたこんなにも穂高先輩を・・・・木嶋さんのことを好きになってしまっていたのだと。



そして昔と同じように、2度目の恋もまた何も出来ずに終わってしまったのだ。





先ほど来社した木嶋さんのもとに、いつもと同じようにお茶を運んだ。



そしてありきたりな挨拶を交わした。




それだけだった。



それで、終わり。






最後だというのに、顔もまともに見られなかった。




ーーーなんて呆気ない終わり方なんだろう。





だけどしょうがないよ。



あれから何年経ったってやっぱり私とあの人は違いすぎて、手が届かないのだから。



またこの恋を忘れるのに時間がかかりそうだ。



っていうか、忘れられるのかな・・・・






「べつに皆原さんの顔が不細工でも、誰かに迷惑がかかるわけでもないからいいんだけどさ」





とっくに席に戻ったと思っていたはずの三上さんは、まだそこに立っていた。




入社当初の“アナタ”から、今では一応名前で呼んでもらえるようになっていた。



相変わらず態度は素っ気ないけれど。




・・・・不細工って。



ちゃんと自覚してるし、そんな2回も言わなくてもいいのに。






「呼んでたわよ」




「え?」




「上で社長が。お客さん帰ったみたいだから、片付けて欲しいんじゃない?」




「そう、ですか」






・・・・帰ったんだ、木嶋さん。




帰っちゃったんだ・・・・・・・・









「皆原さん」




三上さんに呼ばれてしっかり顔を上げると、




「あなたもとの顔は良いんだから、普段からもっと綺麗になる努力をしたら?内面から磨く努力をね」

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