第129話
「木嶋くんはね、目上とか地位とかそんなもの関係なくはっきりと意見するんだよ。それはもうこっちがヘコむくらいのこともね」
「・・・・社長」
木嶋さんが眉尻を下げた。
「もちろんそれは会社の為を思ってのこと。げんにうちは木嶋くんのお陰で、この厳しい中でもなんとか生き延びていられるんだからね」
「それは違いますよ。僕がいくら数字で指摘しても、結局は社長や社員さんの努力なしではどうすることもできませんから」
さっきもそうだったけど、木嶋さんははっきりと自分の意思を示す。それは私でも社長でも、相手が誰であっても変わらない。
厳しいと聞いて最初は驚いてしまったけれど、
社長の言う通り、ただ痛いくらい図星を突いてくるからそう感じるのだろう。
けれどそれがきちんと結果に繋がってるから、表情からもわかるように、社長は木嶋さんのことをかなり信頼しているんだ。
「その謙遜具合がまた憎いよねぇ」
「本当のことですから」
「なんで見た目も中身もイイ男なのに、長いこと彼女がいないのか不思議だよね」
えっ・・・・・・・・!
今度はどうにか口に出さず、心の中でだけで驚きの声を上げた。
穂高先ぱ、木嶋さん。
彼女いないんだ・・・・・・・・
「仕方ないでしょう。彼女より仕事優先じゃ、できてもすぐ振られてしまうんですよ」
ふっ、振られる?!
あの穂高先輩が?!
なんてもったいないことを・・・・!
「それはもったいないことをしたね、その女性たちは」
と、社長もまったく同じことを口にした。
「そう思わない?皆原さんも」
「え・・・・」
社長に声をかけられ初めて、お盆を抱え込んだ状態で2人の会話を聞き入ってしまっていたことに気づいた。
なんだか堂々とサボっているみたいだ。
まだ新人のくせに。
「すみません私、あの、戻ります・・・・!」
頭をぺこっと下げて、慌てて部屋を後にした。
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