第128話
「仕事はもう慣れた?」
テーブルにお茶を置くと、木嶋さんがそう尋ねてくれた。
「えと、はい。少しずつですけど」
簡単な事務作業なら、言われなくてもスムーズに熟せるようにはなった。
けれど専門用語が飛び交うアシスタント的な仕事になると、まだまだといった感じだ。
「ここは社員数は少ないけれど、1人1人に向上心がある。それが数字にもよく表れている。上に立つ社長の寛容な人柄も良いし」
そう言って木嶋さんは、目をやさしく細めた。
「僕が言うのもなんだけど、今まで見てきた中でもここはとても良い職場だと思う。だから皆原さんも頑張って欲しいなって思うよ」
「・・・・はい」
くだらない理由で逃げるように以前勤めていた会社を辞めてしまった私を、こうして受け入れてくれた社長。
社員の人たちも、アットホームな雰囲気とは違うけれど、淡々として見えてお互いの仕事をカバーしつつ、それでいていい意味で常に競い高めあっている様子が伺える。
こうして木嶋さんも褒めてくれた職場だから。
私もここでこれから頑張っていこうと、改めて心の中で誓った。
「んん?私がいない間に一体何の話をしてたんだい?」
社長は戻って来るなり、私と木嶋さんの顔を交互に見比べそう言った。
「ご心配なさらずとも、社長の悪口なんて言ってませんよ」
「うーん、本当かな。木嶋くんって意外と厳しいことも容赦なくバンバン口にするからね」
「え?!」
社長の言葉に思わず声を上げてしまった。
「皆原さん?」
「あの今、ほ・・・・木嶋さんが厳しいって」
「ほーら、ここにも1人、木嶋くんの甘いマスクに騙されていた人間がいたよ」
ふははっと社長は豪快に笑った。
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