第120話
就職難と呼ばれるこの時代に、中途採用なんてそんな簡単なことではないとわかってはいた。
だからカエちゃんも、
「無理に正社員で探さなくても、契約社員だっていいじゃない。遠慮しないでここに居てくれて構わないから」
と言ってくれた。
同じ会社の上司である彼に二股をかけられていた私は、あまりのショックに逃げるように会社を辞めた。
少ないけれど彼との思い出のある部屋にもいたくなくて、情けないけれど暫く姉夫婦のマンションにお世話になっていたのだ。
カエちゃんの旦那様である義理のお兄さんも、本当に血の繋がりがあるように思えるくらい私にもとてもやさしい人だった。
それにお兄さんは出張も多く家にいることも少なかったら、一時的とはいえ私もカエちゃんのマンションで甘えられたのだ。
それは本当に運が良かったのだと思う。
6社目の面接を終えた帰りだった。
今回もまたまったく手ごたえもなく、結果を待たずとも駄目だろうと自覚していた私は、カフェに入り何度も溜め息を吐いていた。
まだ20代前半とはいえ、正直この先、自分が誰かと恋愛して結婚するという未来が想像できない。
もちろんお見合いという手段もあるし、子どももいつかは欲しいからできれば結婚はしたい。
けれど万が一この先ずっと1人だった場合、それでも生きていけるように正社員での就職先を見つけたかった。
・・・・だけどやっぱり無理なのかな。
ずっと無収入でもいられないし、カエちゃんのマンションに居続けるわけにもいかないし。
とりあえず派遣会社に登録するべきかーーー
そう考えていたときだった。
「そういえばアシスタントの岡島さん、来月で辞めちゃうそうっすね」
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