第106話
テンションの上がった杏里は「今日は私の奢りだから!」と、さらにアルコールと料理を追加した。
いやいや、今日は杏里の結婚祝いで私の奢りだからって予め言ってあったのにな。酔って忘れちゃったのかな。
もちろんお会計時には予定通り私が払うけど。
それにしても、これ全部食べれるの?というくらいの量がテーブルに並んでしまった。
最近あまり食欲のない私は、見るだけでゲップが出そうだ・・・・。
「ねぇねぇ、史さん?」
この細い体のどこにそんなに入るんだろうというペースで、杏里は次々と料理を口に運んでいた。
「史さんの愛しの彼を、ぜひこの目で拝んでみたいんですけど。写真とかないのー?」
「・・・・ないよ」
「ウソだ!絶対あるでしょ!今一瞬間があったもん!見たい見たいっ」
「そう言われてもホントにないってば。家にならあるけど、今はないの」
まったく信じていないようで、むーっと恨めしそうに私を見つめる杏里嬢。
・・・・本当は、ある。
寝ているときにこっそり隠し撮りした、眠りの森の美女ならぬ王子さまみたいな希和の寝顔がスマホの中に。
会えないときに、寂しい夜に、ときどきこっそり眺めている。
まるで彼女というよりストーカーみたいだ。
「えー、じゃあ芸能人で言うと誰に似てる?かっこいい?」
「芸能人はわからないけど・・・・かっこいいよ」
「わっ。自分で自分の彼をかっこいいって言えるのって相当かっこいいってことじゃない?」
「・・・・うん。でも別に顔だけで好きになったわけじゃないよ?」
「何気に惚気てるよね、史さん」
惚気たつもりはないけれど、希和がかっこいいのは事実だ。
文句のつけようがないほどに、本当に完璧に整った顔をしている。
だけど、私が希和を好きになったきっかけは顔じゃなかった。
もちろん初めて見たときにすぐにかっこいいなとは思ったけれど。
「でもさ、かっこいいと言えば、史が昔ずっと好きだった人もとんでもないイケメンだったよね」
「え・・・・」
「中学のときに私が誘って見に行った高校の文化祭で一目惚れして、その人の為に志望校まで変えた、ほらあの、」
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