第104話
杏里は何かを探るように、私をじーっと見つめてきた。
「ねぇ史?史はさ、今の彼のこと、本気で好きじゃないの?」
「・・・・なんで?」
「だって。史ってば電話でもいっつも自分の恋愛話になると、すぐ話逸らしたり誤魔化したりしてばかりで彼とのこと何も教えてくれなかったし」
私は思わず苦笑いを浮かべた。
確かに少し胸が痛むほど、身に覚えはある。
だけど電話ならまだしも、こうして面と向かい合って聞かれてしまうと、さすがにそれも難しいのかもしれないな。
「・・・・そんなことないと思うけど」
「ほらー!またそうやって誤魔化すっ」
「だから気のせいだってば」
それでも今日もどうにか逃げ切れないかと精一杯シラを切ってみるも、
「今日こそはぜーんぶ白状して貰うからね!」
適度にアルコールが入り、ギラギラとした目をこちらに向けている杏里からは逃れられそうにない。
・・・・・・・・困ったなぁ。
杏里にも希和のこと、あんまり話したくないのに。
「はい、じゃあまずは馴れ初めからね」
「馴れ初めって」
「確か史の彼って会計事務所に勤めてるって言ってたよね?職場で出逢ったって。そこからどんな風に恋愛関係に発展していったの?」
「・・・・・・・・」
私はふぅっと小さく息を吐いた。
「彼が来る度に私がいつもお茶を出していたんだけど、それで徐々に?」
「なんで疑問形なのよ。っていうか略しすぎだしっ。じゃあ一目惚れっていうより段々好きになっていったってこと?」
「・・・・予感はあったよ。最初に彼を見たときに『あぁこれはヤバイかもしれない』って」
「やだ、ちょっとわかるかも。一目惚れと言うにはちょっと違うのかもしれないけど、でも最初から何か感じるものはあったっていうの。私もそうかもなぁ」
「うん・・・・」
「じゃあそんな予感通りに史は段々と彼に惹かれていったのね。えっ、もしかして告白したのって史から?」
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