第103話

17時に入店したから時間帯はまだ早いとはいえ、さすがの人気店。



すでに店員さんが慌ただしく働いている。



ここは杏里が予め行きたいところをネットでリサーチしてくれておいたお店だ。



料理も美味しいし、軽い仕切りがあるだけとはいえ個室だし、ゆっくり寛げるのも嬉しい。




「杏里の彼って6つも上だから、杏里がこうしたいって言えばなんでも受け入れてくれそうだよね」



「そうでもないよー?意外と子供っぽいとこ多くて、けっこう喧嘩もするし・・・・ってそういえば!彼と史のお姉さんの楓さん、なんと同じ高校の同級生だったんだよー!」



「ええっ、カエちゃんと?」




初めて杏里の彼の年齢を聞いた時に、カエちゃんと同い年だなぁとは思ったけど。



まさかの同級生だったとは・・・・。




「それはすごい偶然だね」



「うん、吃驚した。同じクラスにもなったことあって当時はそれなりに仲良かったみたい」



「今度カエちゃんにも聞いてみる。・・・・けど、ねぇ?もしかして2人って、」



「私もそれは真っ先に確認した。でも元カノ元カレではないって!」



「・・・・そうなんだ」




なんとなく安堵の息を吐いた。




「見知った顔が元カノは嫌だなーって思って」



「だよね」




「よかった」と2人の声が重なり、顔を見合わせて笑った。



私ももしそうで、それが過去だったとしても複雑すぎるもん。





「じゃあ私も安心して結婚式で、杏里の彼の顔が拝めるね」



「うん、楽しみにしてて!いつになるかはわかんないけど。ねぇでも、史は絶対ウェディングドレスだよね」



「へ?」



「想像できるなぁ。史色白だし、装飾があんまりないシンプルなものが似合いそう!うわー楽しみ!」




杏里は両手を合わせて、瞳をキラキラ輝かせている。



楽しみって。




「結婚するのは杏里でしょ?」



「えーでも史だってそう遠くない未来でしょ?

今の彼と付き合って長かったよね?もう5年くらいなるっけ?」



「・・・・うん」



「なに?上手くいってないの?彼と」



「・・・・そんなことないけど。それより今日はもっと杏里の話聞かせてよ。まだプロポーズの言葉も聞いてないし」

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