第102話
◇◇◇
「やっぱりどの部屋も内容のわりに、賃貸が高すぎる気がするんだよねぇ」
「そうかな?こんなものじゃない?」
もう慣れてしまったせいもあるのかもしれないけれど。
「私だってわかってはいたけど実際見ると愕然としちゃった。新婚だし、そこそこ広さがあって綺麗なとこが良いんだけどなー」
翌週の土曜日。
杏里と午前中から待ち合わせして、不動産屋さんを何軒か回り、実際に物件も見せて貰った。
けれどどれも想像とはかけ離れていたようで、杏里はビールジョッキを片手に項垂れた。
「それに家電だってそこそこ良いやつ揃えたいのに。あー、結婚ってお金かかり過ぎ!」
隣県とはいえ、私たちの地元は端っこの田舎のほうだから、物件もこっちとは比べものにならないほど安い。
杏里の理想とする"そこそこ"の物件だと、かなりの予算オーバーになるだろう。
「ねぇ?お金かかり過ぎって、そういえば結婚式はどうするの?やるの?」
「そっちはまだ全然。今は時間もないしとりあえず引っ越しが先で、落ち着いたら考えようって」
「そっか」
杏里が1人で物件見に来るくらいだもん。
やっぱりそれくらい今は忙しくて、結婚式どころじゃないのだろう。
「でも杏里のウェディングドレス姿みたいな。素敵だろうなぁ。あ、でも白無垢も似合いそうかも」
「ふふ、実は白無垢が着たいんだよね、私。神社での挙式に憧れてて。そこは彼とも意見が合ってるんだよね」
全然と言いながらも、もう2人の間ではいろいろ話してたりしてるんだ。
ついさっきまで落ち込んでいた杏里は何処へやら。すっかりご機嫌な表情で、ビールをぐびぐびっと飲み干した。
「おかわり頼むけど、史は?」
「ねぇ大丈夫?明日のお昼はむこうのご両親との会食でしょ?ちゃんと帰れる?」
予定がなければ私の部屋に泊めてあげれば良いのだけど、そんな大事な用があるのに帰れないどころか二日酔いでもまずい。
「大丈夫大丈夫。これくらいじゃ全然酔わないから平気だよ。私けっこう強いから」
「・・・・ならいいけど。じゃあ私のもお願い」
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