第101話

「マサ、キ・・・・?」






まさかの名前に、思わず息を呑む。








「そ。正しいに樹木の樹で"正樹"」





「マサキ・・・・・・・・



穂高さん、"穂高正樹"って、言うんですね」





初めて名字を聞いた時、久し振りのその響きにどきりとした心臓が跳ねた。




だけどまさか名前まで"マサキ"だったなんて。






「ああ。ってなんだよその反応は。そんな珍しい名前でもないだろ」




「・・・・そうですね」




「もしかして、俺のこと知ってたとか?」




「・・・・いえ」




「ふーん?なんかその反応からして、もしかして俺たち昔どこかで会ったことがあって、これが運命の再会なのかと思ったよ」




「会ったことなんてないです。・・・・けど、」




「けど?」





確かに名字も名前もそれほど珍しいものじゃないのに。



それでも今このタイミングで、その響きを聞いてしまったのは。






「ーーー・・・・運命は、感じたかもしれません」








ただの偶然にしては出来すぎていて。







きっとこれは何かの暗示なのだと予感させるには、十分な破壊力だった。





呟いた言葉は、深い夜の闇に溶けていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る