第99話
「皆原さんさ、すでに俺にけっこう懐いてるよね」
「・・・・はい?」
懐くってなに。
私はノラちゃんじゃないのに。
「俺たちってけっこうぴったりかもなって思ったんだよ。爺さん婆さんになっても、2人で縁側でお茶してる姿が自然と目に浮かんだ。膝に猫なんかのっけてさ」
「・・・・私は浮かびませんよ。穂高さんの姿も見たことないのに、想像もできません」
「そりゃそうだ」
穂高さんが珍しく、ははっと声高に笑った。
「俺は皆原さんとなら再婚もありだなって、今思いついたんだよ」
「今って、そんないい加減な・・・・」
それで思いついたままプロポーズ?
やっぱこの人テキトーすぎる。
「だから、そんなもんだって」
「え?」
「彼氏も今日はまだその気がなくても、明日何かのきっかけで気持ちが変わるかもしれない。案外そんなもんだよ、結婚決意すんのって」
もしかして、慰めてくれてるの・・・・?
「それに彼氏だけじゃない。人生初のプロポーズを今日体験したわけだし、結婚したけりゃいつだってできるよ、皆原さんなら」
「人生初のって、え、今日のってカウントされるんですか?ただの思いつきなのに?」
「思いつきでも気持ちはマジだって」
・・・・全然マジには思えないんですけど。
でも。
穂高さんの、こういうストレートじゃないエールが嬉しかった。
「貴重な初体験をありがとうございました」
「・・・・なんかエロいね、その発言」
「は?どこがですかっ」
確かに穂高さんといると自然体ではいられる気がするけれど、それは私が穂高さんのことをそういう対象として見ていないからだ。
どうしたって好きという想いが溢れてしまう希和とは違うから。
「さーて。プロポーズもした仲だし、そろそろ名字じゃなくてお互い名前で呼び合わねぇ?」
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