第97話

「なんですか?気になります。はっきり言って下さいよ」





穂高さんらしくなくって、なんだか気持ちが悪い。


姿が見えない分、何を言いたいのか表情からも窺い知ることができないし。






「皆原さんさ、」




「はい」





一体何を言われるのかと思えば、












「俺とーーー結婚しない?」





ただ揶揄われただけだったようだ。












「・・・・・・・・冗談はやめてください」




「冗談ってひでぇな。今俺けっこう本気でプロポーズしたのに」




「本気の前にけっこうって付けてる時点で、本気じゃないですよね?それに私には彼がいるって言ってるじゃないですか」




今の今まで、その恋人の話をしてましたよね?



なのに何言っちゃってるんだろうこの人は。




「けどさ、まだその彼と今後結婚するかはわかんねぇんだろ?俺、皆原さんけっこうタイプなんだよね。見た目もそうだし、こうして話してても心地いいし」




「だからって何で私と穂高さんが・・・・」




「皆原さんも同じだろ?何か感じるものがあるのか、顔さえ見たこともない俺に既にかなり心許してるよね」




「・・・・それは、」




顔が見えないからこそ話せてるってこともあるし。



もちろん、だからといって誰でもそうなっていたわけではないとも思うけど。



・・・・まして、ここまで心が落ち着くなんて。




だけど、だからっていきなり結婚なんてふざけてるとしか思えない。





「お隣さんになって、ノラがきっかけでこうして自然とベランダで話すようになったのもさ。もしかしたら彼氏じゃなくて、俺が皆原さんの運命の相手だったのかもよ?」



「そんなの、運命じゃなくてただの偶然です」



「まぁ運命って言葉も陳腐か。けどそう思うくらいの縁は感じたってこと」

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