第96話

その後に訪れた一瞬の静寂のあと、







"ふにゃぁー"




ノラちゃんの声が綺麗に響いた。










そう簡単に相手の人生背負えない、か。







"俺も考えてるよ"







ほんの僅かに眉を顰めてそう言った希和。





・・・・希和もそうなの?




簡単じゃないけど、どうにかしようと今必死に悩んでくれているの?



希和のその言葉に、私は少しは期待して待っていてもいいの?




たとえその望みが僅かしかなくても・・・・









「穂高さんって、思ってたよりもすごくしっかりされてるんですね」




「は?おまえそれ馬鹿にしてんの?」




「だって最初はもっとちゃらんぽらんな人かと思ってたから」





森さんの借金のことと言い、今だって私の話に真剣に答えてくれて、面倒見がいいというか優しくって。



どうしたってマイナス方向にしか考えられない私を、正当な根拠を持って押し上げようとしてくれる。



思ってたよりしっかりした大人の男性だった。






「皆原さんは逆だよな」



「え?」



「話した感じではもっとしっかりしてるのかと思いきや、見た目の印象のまんま。けっこう危なっかしくて心配で目が離せないんだな」



「・・・・・・・・・」






ちょっと、耳が痛いかも。



私も社会人になるまでは、わりと1人で何でも要領よく熟せるタイプだと思ってた。



だけど社会人になってから・・・・前の会社で上司と付き合って裏切られてしまったあとの私は、1人でどうすることも出来ずに、けっきょく姉夫婦にすごく迷惑をかけてしまった。



今回のストーカーらしき件だって森さんや三上さんに迷惑をかけそうで、しっかりしなきゃと思っていたところだった。




「おーい、もしかしてへこんでる?」



「・・・・少し」



「女の子はそれくらいの方がいいよ。彼氏だってそんな皆原さん、ほっとけないでしょ」



「希和の、彼の前では、ちゃんとした私しか見せないようにしてるから」



「皆原さん、それってさ、」



「はい?」



「いや、・・・・まぁいいや、なんでもない」




いつだってズバズバ物を言ってきた穂高さんにしてはめずらしく、歯切れが悪い。

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