第89話

「やっぱり・・・・わかっちゃった?」



「えっ、本当に?」



「うん。実は、決まりました、結婚」





幸せそうな声で、杏里がそう白状した。





「え、え、えーと。相手は付き合って1年くらいになる、6つ年上の、あの彼?だよね?」



「もちろんそうだよ」





杏里が、結婚・・・・・・・。



そうだろうなと予想はしていたものの、いざそうだとはっきり言われると、頭の中はプチパニックだ。




「うん、そっか、そうだよね。なんかいきなりで吃驚しちゃって」



「ふふっ、だよね。だって自分でも吃驚したもん。思ってたよりも付き合ってから早かったなって」




私達はもう29歳にもなるし、同級生の半数以上はすでに結婚している。



杏里の相手は6つも年上だし、しかも交際期間が1年なら、それほど驚くことでもないのだろうけれど・・・・。



ランドセルを背負っていた頃から知っている親友だからこそ、他とは違う衝撃があるような気がする。




けれど、




「・・・・すごく嬉しい。おめでとう杏里、よかったね」




いつも明るくて、見た目も中身も可愛い杏里。



あまり会えなくなってからだって、やっぱり杏里は1番の友達で、大好きで私の自慢だよ。



そんな杏里がすごく好きだと言っていた彼との結婚が決まって、私も心の底から嬉しいんだなって今感じてるよ。







「ありがと、史・・・・」




電話の向こうで照れくさそうに微笑む杏里の顔が鮮明に浮かんだ。





「ねぇ杏里?」



「なに?」



「その、いきなり結婚が決まった理由って、もしかして・・・・?」



「やだ、違う違う!できてないよ!」





なんだ、違うんだ。



杏里も自分でも驚いたって言ってたから、きっと結婚も急に決まったことで、ってことは妊娠がきっかけなのかと思ってしまった。

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