第88話
「電話、史のだね」
「うん・・・・」
一体誰だろ?
こんな時間にーーーって。
まだ時刻は20時を過ぎたばかりだっけ。
もうとっくに深夜のような感覚でいた。
早々にベッドで希和と抱き合ってしまったが為に、時間の感覚がおかしくなってる。
「あ」
ディスプレイを覗くと、そこには意外な人物の名前が表示されていた。
「誰から?」
「えっと杏里、って地元の友達から。電話がかかってくるなんてすごく久しぶりなんだけど」
「何か急用かもしれないね。俺はシャワー浴びてくるからゆっくり話してなよ」
希和は私の頭をぽんぽんっと撫でると、慣れたように脱衣所へと入って行った。
・・・・本当に、希和は気の利く素敵な恋人だなって思う。
「もしもし、杏里?」
「史?久しぶり!ごめん、なんかお取込み中だった?」
「ううん、大丈夫だよ。出るの遅くなってごめんね?久しぶりだね」
杏里は小学生のときからの親友で、高校までずっと一緒で1番仲が良かった。
大学からは私が東京へ出てしまったこともあって、地元に残った杏里とはあまり会えなくなってしまっていたけれど。
それでもときどきメールで近況を報告し合ってはいた。
でもこうして電話がかかってくることなんて、今までほとんどなかったから何かがあったことは明白だった。
「史、元気にしてる?何か変わりはない?」
「うん、相変わらず。特に変わりなく元気にやってるよ」
「そっか・・・・」
そこで杏里が一旦、黙り込む。
「もしかして、結婚決まった?」
ーーー何か、なんて。
この歳になって、久しぶりにかかってくる友達の電話の理由なんてこれしかないと思った。
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