第76話

定時で上がれることは、昼休みに希和にメールで知らせてあった。



けれど仕事を終えてスマホを確認しても、希和からの返信はなかった。




会社を出てすぐに電話をかけてみるも暫くコール音が聞こえた後、留守番電話に切り替わってしまう。



夕方には着くと言っていたのだから、18時を少し回った今はもう日本に着いているはずなんだけどな・・・・。




もしかして飛行機が遅れているとか?




今もまだ機内にいるのなら、連絡がつかないのも納得だ。とりあえず、希和からの連絡を待つしかないか・・・・。



何時になるのかわからないし、疲れてもいるだろうから、外に食事に行くことはあまり考えられないだろうな。






ーーーーよし!



それならと、私はスマホを手に持ったまま、スーパーに寄って食材を買って帰ることにした。








もともと和食好きな希和だけど、帰国してすぐは刺身と味噌汁が食べたくなると言っていた。



食事を済ませてきたとしてもお酒のおつまみにもなるようにと、茄子の煮浸しと、こんにゃくと鶏肉の味噌煮、トマトと梅肉のサラダを作っておいた。



当然、お味噌汁も。



さらに冷蔵庫の中には、ちょっと奮発して買った、豪華なお刺身の盛り合わせもスタンバイしている。





「・・・・何かあったのかな」




支度も完璧に済ませたのにと、鳴らないままのスマホを見つめたーーーその時。







「っ・・・・もしもし!」





ワンコールも鳴り終わらないうちに、スマホを慌てて耳に当てた。





『ーーー史?連絡遅くなってごめんっ』




「ううん、大丈夫。それより何かあったの?今どこ?」




『もう都内にはいるんだ』



「え?じゃあ、」





それならもうすぐ会えるんだって、



・・・・そう思ったのに。





『実は、決まりかけていた内装業者と最終段階でトラブルがあったらしく、帰国して早々だけど今俺も再度商談に加わってるんだ。それで電話もメールも返せなくて。本当にごめん』




「・・・・内装業者って。それって」




『アサミの店のだよ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る