第75話
何でもないって、
大丈夫だって信じているのに。
どうしてもアサミさんの存在が気になって仕方がなかった。
同じ女性である私から見ても、惚れ惚れするほど美しいアサミさん。少ししか話さなかったけれど、たぶん性格も良さそうな気がした。
あんな完璧な人を前にして、希和は何も思わずにいられるのだろうか?
希和と会える頻度が最近ますます減ってしまったことが、余計に不安な気持ちを増大させているのかもしれない。
それと重なって、見張られているような気味の悪い視線が心を深く沈ませた。
「今日木嶋さんに会って、皆原ちゃんの気分が少しでも上がるといいんだけどね」
「本当にすみません。プライベートのことなのに仕事に影響させてしまうなんて」
「いや、だからミスはしてないから大丈夫だって。今のところはね。皆原ちゃんって本当に真面目すぎるわよね」
「すみません・・・・」
「ほらまた、そうやって謝る」
三上さんは私のおでこをぺちっと叩いた。
「単純に彼に会えなくて寂しいってだけが理由じゃないこともなんとなくわかってるわよ。もしも悩んでることがあれば、私でよければいつでも相談に乗るから。わかった?」
「・・・・はい。ありがとうございます」
森さんといい三上さんといい、こんな風に親身になって心配してくれる人がいて。
本当にありがたいなって思う。
希和とアサミさんに何かあったわけじゃない。
ストーカーだって決まったわけじゃない。
これ以上周囲に中途半端に心配かけないよう、私自身がもっとしっかりしなくちゃ。
今日希和に会ったら、寂しかったと素直に甘えてみよう。
本当はもっと会いたいと言いたいけれど、その言葉を口にするのはやっぱり少しハードルが高かった。
だってきっと希和は、そんなこと痛いくらいわかってる。
その上で私の為に精一杯、忙しい合間を縫って会おうと努力してくれているはずだから。
だからどうしたってこれ以上、そんな優しい希和の負担にはなりたくなかった。
ーーーけれど本当は。
物分かりのいい女のふりをしてまで我慢したのは、深く傷つくことが怖かっただけのただの自己保身。
・・・・希和の為なんかじゃなかったんだ。
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