第66話

「まぁストーカーなんて、さほど接点のないコンビニ店員や配達員でもなったりする場合があるみたいですし。皆原さん、可愛いから狙われてしまったのかもしれませんね」





"木嶋くんにこんな可愛い彼女がいたなんて"





こんな時なのにアサミさんの台詞が重なって、





「私はべつに可愛くなんて・・・・っ」




ついムキになって全力で否定してしまった。



可愛いという言葉に、トラウマのように過敏に反応してしまう自分に呆れる。




案の定、森さんは目をぱちぱちさせている。




「いえ、あの、・・・・すみません」




それから森さんは、ふっと目を細めた。





「ご自分に自信がないんですね、皆原さん」




「・・・・はい」





だからこんな自分にストーカーが、なんて言われてもピンとこないし、やっぱりそういうのとは少し違う気もしてしまう。




「とにかくストーカーが男性だと決まったわけではないですけど、それでもこれだけ何度も視線を感じているのなら、誰かが何か目的があって皆原さんをつけているのは確かだと思うんです」



「・・・・・・・」



「今のこの状況だけでは警察にいっても仕方ないですし。誰かご相談できる相手は?」




私はふるふると首を振った。



やはり具体的に何かがあったわけじゃない現段階では、誰かに話す気にはなれない。




「・・・・ではとりあえず、夜分に1人で行動することは避けるなどして十分注意して下さい」



「はい」



「何かあったら、すぐに私に連絡してもらえますか?ここに番号とアドレスが記載してあります。時間など気にせず遠慮なくいつでもけっこうですから」



森さんはテキパキとした仕草で、胸もとの内ポケットから名刺を取り出した。




「その間に何か良い方法はないか、私も考えておきます」



「なんだかすみません、全然関係のない森さんにこんなこと・・・・」



「いいえ、それでも私なんかがお役に立てるかはわかりませんから。それよりご自身で気をつけるほか・・・・」




ーーーとその時。



私には聞き覚えのない無機質な音が、会話を遮った。

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