第63話
よくそんな強がりを言えたなと、今は思う。
それから徐々に、思うように希和に会えない日が続くようになっていった。
これまでだって他のカップルと比べても、かなり会う頻度が少なかった私たち。
側から見れば、もはや付き合っているのか疑うようなレベルかもしれない。
だけどそれでも仕事だから仕方のないことで、アサミさんのことが落ち着くまでの一時的なものなんだと。
私は懸命に自分に言い聞かせた。
当たり前のように湧き出てしまう寂しさも、私は希和に伝えることなく必死で抑え込んだ。
希和は我儘も不満も漏らして欲しいと言っていたけれど。
もしも私が本音をすべて吐き出してしまったのなら、どうなるのか。
たぶんきっと、私たちはーーー・・・・
「・・・・・・・・」
こうして視線を感じるのは、何度目だろう。
誰かにじっと絡みつくように見られているような感覚が、毎日ではないけれど、仕事帰りや週末出掛けた時にときどきあった。
その度に周囲を見渡すのだけれど、特に怪しいと思う人物を見かけたこともなくて。
やっぱりただの気のせい・・・・?
希和とアサミさんのことがあって、最近の憂鬱な心がそうさせているだけなのかな。
だけど感じていたのはその前からだし・・・・。
ふうっと息を吐いて、マンションのエントランスに入ろうと勢いよくくるりと向きを変えた、
その時。
「何かあったんですか?」
「・・・・・・・・っ!」
心臓が、ぴたりと、止まった。
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