第57話

背後から届いた声に私たちは足を止め、同時に振り返った。





「やっぱり、木嶋くんだった」





白く陶器のような肌に、長い睫毛に縁どられた大きな瞳が印象的で。



艶のあるナチュラルブラウンのロングヘアは、先端だけ緩くカールがかかっている。



華奢だけれど女性を強調する部分だけはしっかりと膨らみのある、抜群のプロポーションだ。







ーーー"木嶋くん"





そう希和を呼んだ声の主は、同性の私でも思わず見惚れてしまうほど、美しい女性だった。








「アサミ」





すぐ隣にいる私がやっと聞き取れるほどの呟くような声で、希和はその女性のことを呼んだ。






「久しぶりだね。えっと、梶くんの結婚式以来だから、4年ぶりくらい?になるのかな」




「・・・・そうだな」



「梶くんとはね、ときどき梶くんのお店に飲みに行ったりして会うこともあって。木嶋くんの活躍も聞いたりしてたんだけど、すごく頑張ってるみたいだね」



「いや、まだまだだよ」





言葉少なげに返す希和の声は、心なしか固く感じた。




「あ・・・私ったらごめんね、一方的に」





その美しい眼差しが、希和から私へと流れた。



私に軽く会釈をした"アサミさん"に、私も慌ててぺこりと頭を下げた。





「木嶋くんの、彼女?」




"アサミさん"は再び希和に視線を戻すと、そう尋ねた。




「・・・・あぁ」




希和は私の背中に軽く触れると、





「今お付き合いしている、皆原史さん」




そう言って"アサミさん"に私を紹介した。





「あの、皆原です」




同じ人間とは思えないほどの完璧な容姿の彼女を目の前にして、私の声は少し上擦ってしまった。

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