第52話

「漫画家、ですか」



「そ」



「・・・・すごいですね」



「すごいか?」



「すごいですよ!」





よくわからないけど、それだけでご飯を食べていける漫画家とか小説家って、本当に一握りなんじゃないかって思う。



だから担当の森さんがああして頻繁に出入りしている穂高さんは、それなりの漫画家さんなんじゃないかなって。



いちOLである私と同じマンションに住んでいるから、きっと誰もが知ってるってほどでもないのかもしれないけれど、十分すごい。




「読んでみたいです。帰りに本屋さんに寄って来ようかな。なんて作品ですか?」




漫画は子供の頃は多少読んだことはあっても、成人してからはまったく読まなくなった。



だけどお隣さんが描いたっていうものなら、ちょっと読んでみたいかも。



本にサインとか貰っちゃおうかなと、ミーハー心もひょこっと覗かせた。




・・・・けれど。




「んー、皆原さんが本屋で買うには、そのコーナーに行くことさえ抵抗があるかもな」



「へ?」



抵抗?



「ネットでこっそり買うか、べつに俺がくれてやってもいいけど。内容もけっこうハードで濃厚なのに、意外と女ウケもいいんだ」





こっそり?濃厚?



それって、所謂そういうジャンルの、ってことだよね。



アダルト的な・・・・。




「や、やっぱりやめときます」



「いいの?ま、読みたくなったらいつでも言ってよ」





それで成り立つお仕事もあるんだから、偏見は持ってはいけない。



そう思いつつも穂高さんのお仕事には、今後はあまり触れないようにしようと固く誓った。

















「皆原さーん、お昼遅くなったけど出ておいでよ」



「え、あ・・・・」




時計を見れば、とっくに昼休みの12時は過ぎていた。



今日の夕方までにと頼まれていた資料を纏めるのに、熱中しすぎて気づかなかった。

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