第49話

「もちろんいつかは、とは思ってますよ。子どもだって欲しいですし・・・・。でも」



「でも?」



「今って考えると、なんて言うか、したいのかしたくないのか。自分でもよくわからなくて」



「それって相手はいるけどってこと?まぁ、そりゃいるか。皆原さんすごく可愛いもんね」



「あの、嫌味に聞こえるんですけど」




また、くくっと押し殺したようなくぐもった笑い声のあと、「そんなことないよ」と全然気持ちの入っていない言葉が続いた。




「それってつまりさ、皆原さんは今の恋人と結婚したいのかどうか迷ってるってこと?」



「迷ってるっていうか・・・・・」






希和とは一生一緒にいたい。


離れることなんて考えられない。



その想いは確かにホンモノで・・・・。



それなのに、どこかで躊躇してしまう自分もいるのだ。




だけどその要因を口にしてしまったら私は・・・・





第一希和だって結婚のこと、どう考えてるのかわからないのに。






「あの、」



「んー?」



「私なんでこんなこと、顔も見たことない穂高さんに話してるんでしょうか?」



「さあ?」




確か穂高さんの職業について私が聞いたはずだったのに、なんでこんな状況に?




「でもさ、顔が見えない俺にだから言えるんじゃねぇの?」



「え?」



「本当はずっと誰かに聞いて欲しかったこと、皆原さんは抱えているとか?」



「・・・・・・・・」




どうしてこの人はーーーー





「俺でよければいつでも聞いてやるよ。って皆原さん?時間大丈夫?」



「あぁ!」




室内の時計を覗き見ると、非常にマズイ時間を表示していた。



焦る私とは対照的に、「いってらっしゃーい」と呑気な声がまた背後から聞こえた。

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