第41話
「あ、うん。実はそのお隣さんがね、怪我した野良猫を保護してるみたいで」
「保護って、史のとこペット禁止だよな?」
「そうなの。一応、怪我が治るまで一時的にみたいなんだけど」
「もしかしてそれでその猫を俺に飼えるかって話?ここもペット禁止だけど?」
「あ、違うの。ごめんね、そうじゃなくて」
話の流れで希和がそう捉えてもおかしくはなかった。
「ただ希和が動物が好きかどうかって、聞いたことなかったなって思っただけなの」
そう聞いたあと、長く付き合った大人の恋人に聞くにはあまりに幼稚すぎた質問に、少し恥ずかしくなった。
だけど希和はやっぱり真剣に答えてくれた。
「好きだし飼ってもみたいけど、こんなに仕事が忙しくちゃほとんどかまってやれないし、可哀想すぎるよね」
「うん、そっか」
「だいたいペットどうこうの前に、時間があるなら俺はもっと史にかまいたいよ」
「・・・っ、かまうって」
私は猫じゃないのに。
そう思いつつも与えられた微糖に、ほんのりと体温が上昇する。
けれど、次の言葉ですぐに平熱を取り戻した。
「違うな、俺がかまわれたいのか。史といる時間が俺には癒しだから」
それは希和と付き合い始めた頃から、よく言われていたことだった。
希和の癒しになれるなら嬉しい。
・・・・・・嬉しいのに。
希和がやさしく肩を抱き、自分の胸へと私を引き寄せた。
「希和が望むなら、私はいつだってすぐに駆けつけるよ。猫じゃらし片手に」
「それは楽しみだな」
希和の肩がくくっと揺れた。
「けど、意外だね」
「え?」
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