第40話
「だけど、棄てるのは嫌だよ」
「もちろん。インテリアとしても素敵なものだから、このまま棚に飾っておこう?」
「うん・・・ありがと、希和」
私がようやく小さな笑みを見せると、希和も同じように笑った。
そのままその唇が軽く触れた。
「史」
「・・・・・?」
「京都にって言っちゃったけど、当分は纏まった休みが取れそうにないんだ。・・・ごめん」
私を慰めるために咄嗟にしてしまった約束だったんだろう。
だけどこんなにもすぐに白状してしまう律儀な希和が可笑しくて、私はふふっと笑った。
「そんなの知ってるよ。最初から期待してないから大丈夫」
「それはそれで傷つくんですけど」
「とりあえず早めに新しいものが欲しいから、今度一緒に買いに行って欲しいな。もちろん都内のお店でいいから」
「それならお安い御用だ。というか、明日買いに行こうよ」
「いいの?」
「また時間が取れたら京都にも行こうな」
「うん・・・・!」
また行きたいな、いつか絶対。
希和と2人で京都に。
2人の視線が重なって、そのまままたゆっくりと唇も重ねた。
食事を済ませたあと、いつものように一緒にお酒を飲みながらテレビで映画鑑賞をした。
画面に猫が映り込み、ふと思い出したことを聞いてみることにした。
「ねぇ、希和って動物は好き?」
「好きだよ。犬も猫も飼ったことはないけど」
「そうなんだ」
「史も好きだよね。実家で昔、猫を飼ってたって言ってたもんな」
「・・・うん、好き」
それを話したのはかなり前のことなのに、覚えていてくれたんだ。
「でもどうした?いきなりそんな質問、ペットでも飼いたくなった?」
「ううん、そうじゃなくてお隣さんが・・・」
そこで一旦口を噤んだ。
野良ちゃんのこと。
誰にも言わないって言っちゃったけど、希和ならべつに構わないよね?
希和はうちのマンションと関係もなければ、むやみやたらに口外する人でもないし。
「お隣さんって、あの例の引っ越してきたばかりの?」
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