第33話
「まさかとは思うけどその希和さんって・・・・・既婚者、ではないわよね?」
「違うよ、ちゃんと独身。既婚経験もない」
「じゃあなんで・・・・・」
カエちゃんはますます眉を顰めた。
当然だと思う。
それまで仕事のことも恋愛のことも、私はカエちゃんには何でも包み隠さず話してきた。
けれどそんな非の打ち所がない素晴らしい恋人がいながら、5年も打ち明けずにいたのだ。
何かあるのではと疑われても仕方がない。
「・・・・私とは不釣り合いなくらいの、本当に完璧な人だから。だからね、長くは続かないかもって思ったら、なんか言えなかったの」
「けど5年も続いてるじゃない」
「・・・本当にね。自分でも吃驚だよ」
そう言って力なく笑ったけれど、カエちゃんは変わらない表情で私をじっと見つめていた。
「本当にそれだけの理由?」
「それだけだよ」
私も笑顔を崩さないままに。
するとそれ以上の追及を諦めたのか、カエちゃんが小さく息を吐いた。
「・・・史に決まった相手がいるのなら、お母さんが今準備しているお見合い断らせなきゃね」
「えっ、お見合い?!」
そんなこと企んでたの?
「ついこの間の電話の時にはお母さん、何も言ってなかったけど・・・」
「史が断れないように完璧にセッティングしてから言うつもりだったんでしょ。もしくは嘘吐いて当日呼び出すつもりだったとか」
うー。
お母さんならそれくらいしそうだ。
「勘弁してよ・・・」
「史にも早く結婚させて、孫の顔が見たいんだって張り切ってた。そうやって押し付けるのやめなよって私も言ってるんだけどね」
「もう、最悪だよ」
純粋に娘の幸せを願ってではなく、孫欲しさに結婚を急かす母親ってどうなの?
寧々1人でも、とりあえず孫がいるんだからそれでいいじゃない。
「でもそういうことなら、私からお母さんにお見合いの話は断るように言っておくわ。それから史に干渉するのも止めるようにも」
「うん、そうして。カエちゃんお願い」
これでまた当分、実家から足が遠のきそうだ。
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