第27話

「あ、今日はお休みなんですね」



「違う違う。俺は会社勤めとかしてないから、出勤もなにもないわけ」



「え・・・」





会社勤めしていない?



それって働いてないってこと?




この人って・・・・・・穂高さんの、ヒモなの?




挨拶に来たときの穂高さんはスーツ姿だったから、彼女の方はきちんと仕事をしているようだったし。



彼女だけが働いて、この人を養ってるの?



この彼の容姿はまだ目にしたことはないけど、この渋く低い声からなんとなく私より年上な気がする。



ってことは、もう30代だよね。



それなのに無職って。




それでいいのか、穂高さん・・・・・・!



って、そう思う一方で、それでも好きなら仕方ないよねとも思ってしまう。










「おーい、皆原さん?」




突然黙り込んでしまった私に、不審そうな声が届く。




「・・・・あの、今日は穂高さんは?」



「は?」



「穂高さんは今、お部屋にいらっしゃるんですか?きっとまだ出勤前ですよね」




普通のOLさんなら、さすがにまだ出勤するには早すぎる時間帯だ。




「皆原さん、なに言ってんの?」



「なにって・・・」



「俺以外、誰もこの部屋にいないけど?」



「え?」



「俺、一人暮らしだから」



「ハイ?」





・・・・・・ちょっと待って。



どういうこと?




「え、だって穂高さんは?!引っ越しのときに挨拶に来た女性です!」




「挨拶?」




「そうです!スーツを着て眼鏡もかけた、あの真面目そうな彼女です。それにこの前の夜だって声も聞こえたし・・・・」





この目で確かに見た、あの地味OLさん。



"穂高"と書かれたタオルまでご丁寧にいただいたのに。



それについ先日、女性のあの声だって聞いた。





彼女、"穂高さん"は一体・・・・・・?

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