第25話
「あの、でも大丈夫なんですか?ここペット禁止だし、もし大家さんにバレたら・・・」
「今んとこ皆原さんが喋んなきゃ大丈夫。それとも何?もしかしてチクる気?」
"なぁー"
「こいつは事故で怪我してるっつーのに、皆原さんは薄情にも追い出そうと企んでるの?」
"なぁー"
またしても息ぴったりに、なぜか私が責められる。
「そんなこと考えてません!」
隔て板の向こうにいる、顔も見えない相手に向かってそう訴える。
「ていうか、怪我してるんですか?猫ちゃん」
「自転車とぶつかって脚を怪我したんだ。それを偶然俺が目撃しちまって。そのままにできないから病院連れてったんだよ。とりあえず元気になるまでは面倒みようと思ってる」
「じゃあその子、野良ちゃんなんですね」
「そ」
野良猫だし自分が悪いわけでもないのに、放っておくことができずに実費で病院に連れていって面倒みてあげてるなんて。
口調は素っ気ない感じだけど、穂高さんの彼氏さんはすごく良い人なのかもしれない。
・・・舌打ちは聞かなかったことにしよう。
「怪我の具合はどうなんですか?」
「初日こそ食欲もなかったけど、この通り元気だよ。脚はまだ引きずってるけどね。元気すぎてこうして鳴くからおたくにもバレたんだよ。
おまえ、もうちょい気を付けろよ?」
"なぁー"
もはや名コンビすぎて、クスクス笑ってしまった。
「もう飼ってあげたらいいじゃないですか」
「無理だって。あ、皆原さんが飼う?」
「私だって無理ですよ!ここペット禁止だって言ってるじゃないですかっ」
困ったなー、と嘆くその声にはすでに愛おしさ滲んでいた。
きっとこの人がどんな道を選んでも、きっと野良ちゃんを不幸にすることはない気がした。
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