第24話

"あ、あ、あ、あ"





それはベランダに出てみると、はっきりと聞こえた。



一昨日聞こえたのは、確実に女性の喘ぎ声だった。けれど今聞こえてくる"鳴き声"はそれとは違う。



奇妙な鳴き方だけど、実家で飼っていたこともあるからすぐに気づいた。






"あ、あ、あ、あ、なぁーーー"





昔うちにいた子も窓から見える鳥にむかって、よくこんな声を出していたっけ。




そう思い出して、くすりと笑った。





・・・・・・それにしても。






「なんで猫がいるの?」






このマンションはペットを飼うことは禁止されている。



引っ越してきたばかりのお隣りさんがもともと猫を飼っていたのなら、ペット可のマンションに引っ越すべきなのに。



第一、あの真面目OLさんがそんなルール違反を犯すタイプにも見えないけれど・・・。




すると、気のせいかチッと舌打ちのような音が聞こえたあと、





「ーーーどちらさん?」




「え・・・」




猫の鳴き声と同じ方角から、低い男性の声が聞こえた。





「ねぇ、どちらさん?」




「・・・・私?」




「そ、お姉さん。


おまえが外にむかって鳴くからお隣りさんにバレちまったじゃねぇか。どうすんだよ」




"なぁー"




ぴったりなタイミングで、猫が返事を返す。


声をかけてきた男性にすっかり懐いているのがわかる。



この声の人物は、"穂高さん"の彼氏さんなのだろうか?





「あの・・・私、皆原です。あの、その猫ちゃん、飼ってるんですか?」



「皆原さん、ね。飼ってるつもりはないよ。今だけの居候」




今だけ?誰かの猫を預かってるのかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る