第23話

三上さんが言いたいことはわかる。




本当に今求めるべき物が何なのかも。






ちょうど直前にも、千家さんからもそんな話を聞いたばかりだったから。






20代最後の誕生日。




一緒に過ごす相手は、5年も付き合った年上の恋人で。




ディナーはそうそう予約の取れないお店。




そうなるには絶好のシチュエーションとタイミングだった。





私だって意識しなかったわけじゃない。





店内でも、希和の部屋へ行ってからも。



行為を終えたあと眠りにつくその瞬間まで、ずっと1人でドキドキしていた。





もしかしたらって。




だけど結局ーーー・・・そうはならなかった。




















シャワーを浴びたあと、冷蔵庫に入ったビールに手を伸ばしかけてぐっと堪えた。




・・・やめよう。




独身アラサーが晩酌を習慣化させるのは、なんだかすごく切ないし危険だ。



このビールは希和がいつ来てもいいようにと、希和の為に用意してあるものだった。




諦めてミネラルウォーターをぐっと飲み干し、要らぬことを考えないようにと、そのまま大人しくベッドに潜り込んだ。







早々に眠りについたせいか、翌朝は早くに目が覚めてしまった。





ーーーすると。





「・・・・・・嘘でしょ」





またもや微かに、あの高い声が聞こえてきたのだ。





しかも朝っぱらから?



そんなに激しく?





一昨日、久しぶりの希和の激しい攻めにだって私はそこまで声を出したりはしなかったのに。



と、つい自分と比べてしまって思わず顔が熱くなりかけたところで。





「・・・・あれ?」





この間とは違う異変に気付く。




確かめようと、私の足はベランダへと向いていた。

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