第2章

第22話

「あら、そのバッグ可愛いわね」






1時間ほどの残業を終えて帰り支度をしていると、後方から三上さんがひょいっと覗き込んできた。





「あ・・・えっと、昨日もらったんです」



「誕生日に木嶋さんに?」



「はい」





私はプレゼントに限らず自分で購入したものでも、なんとなくすぐには使えずにしまい込んでしまうタイプの人間だった。



それを知っている希和は今朝、出勤鞄として使うよう強引に荷物を入れ替えたのだ。



そうでもしないとまた長い間眠らせることになっただろうから、良かったのかもしれない。




初使用で気付くなんて、さすが三上さんは目敏いなぁ。





「あっ、これ!・・・・へぇ、ここを突いてくるとはやるわねぇ。容姿だけじゃなくってセンスまでいいなんてね」




まじまじとバッグを見つめていた三上さんが、内側にさり気なく刻まれたブランドネームに気付き、息を漏らした。



希和がくれたバッグは名の知れたハイブランドではないが、少し海外のブランドに詳しい人間なら知っているであろうイタリアブランドのものだった。



ファッションにはいつも気を抜かない三上さんは当然知っていたのだ。





「これ、けっこう高いのよねー」




普段にも使いやすくシンプルなデザインのレザーのトートバッグ。


全体がベージュカラーで、底と持ち手部分のみブラックのバイカラーになっていて、それがすごく可愛いくて私も好みだ。







「だけど、そっか。・・・バッグか」





ちらりと私に視線を流す。





「29歳の誕生日に、バッグか」





・・・・そんなに2回も繰り返さなくたっていいのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る