第20話

アマンは予想を遥かに超える、本当に素敵なお店だった。



大正時代に建てられ国指定登録有形文化財でもある建物をリノベーションしたこともあり、その"本物"の重厚さに、居るだけで何度溜め息を吐いただろう。



お料理も見た目からして繊細で美しく、一品一品がまさに芸術作品だった。




「食べてしまうのが勿体無いから、このまま冷凍保存して持って帰りたい」




そう言ったら希和に笑われた。



だから仕方なく、というのもおかしいけれど、ちびちびと少量ずつを口に運んだ。



美味しい、なんて言葉では軽すぎて、だけどそれ以上に他にうまく表現できる言葉が見つからなかった。




お店を出る頃にはお腹だけでなく、胸までもいっぱいに満たされていた。



















朝は不安だった空には、今は辛うじてだけど月が覗いている。




秋の匂いを微かに感じる風に、カーディガンの胸もとをきゅっと抑えた。







「今日は本当にありがとう。おかげで最高の誕生日になったよ」






支払いをしてくれていた希和がお店から出てくるのを待って、改めてお礼を言った。




「俺の方こそここに来たいって言ってくれた史に感謝だよ。すごく良い店だった」




「うん、本当に。またいつか来たいな」




「そうだな、また来ような」






今回は希和の職権乱用だから特例だ。



今度は何年先になるかわからないけれど、絶対にまた来たいな。




次もまた、希和と一緒に。









「どうする?」




「え?」




「今夜泊まるの、俺の部屋でいい?明日も仕事だし史の部屋のほうが都合がいいならそっちでもいいよ」

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