第17話

翌朝。




いつもより1時間以上も早起きをした私は、念入りにメイクを施した。



髪もくるくるとアイロンで丁寧に巻き、それを後ろでルーズに纏めたアップスタイルに。



仕上げに、去年の誕生日に希和に貰ったオパールのピアスを耳朶に揺らした。






ーーーよし、完璧・・・・かな。





整形でもしない限り限界があるのはわかっているけど、現状での最大限にまでは頑張れたと思う。



三上さんには今夜デートだって確実にバレそうだなと、鏡の中の自分を見て少し笑った。




出勤するにはまだ時間に余裕があるから、朝食にフレンチトーストでも作ろうとキッチンに立つと、ベッドの上のスマホが鳴った。





メールではなく着信音。




「・・・・・・・・」




こんな平日の朝からかけてこなくても。



電話に出るか迷ったが、今出なければまた夜にでもかけてくるだろう。



久しぶりの希和との時間の邪魔だけはされたくなかった。



ため息を吐いてから、スマホを耳に当てた。





「おはよう。朝から何?」



『お誕生日おめでとう、史』



「ありがと」



『史ももう29歳になったのねー。お母さんも老けるわけだわ。ね、もう嫌になっちゃう』




ダージリンティーの入ったカップを片手に、ベランダへと移動する。




『来年なんて30よ。20代最後の年も本当にあっという間なのよ』




「何が言いたいの?」




『何って。楓は史の今の歳にはもうとっくに結婚してたっていうのに。寧々ちゃんだってもう5歳になるのよ』



「"もう"じゃなくて"まだ"29だよ。今は晩婚化が進んでるんだから、全然遅くもないし。だいたい6つも上のカエちゃんと比べないでよ」




母は6歳上の姉のところに生まれた初孫が可愛くて仕方がないらしく、それから私にも結婚を急かしてくるようになった。

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