第15話

「嬉しくないの?」



「もちろん嬉しいよ!嬉しいけど・・・。希和、無理してない?すごく忙しいのに」





すると今度は希和が、受話器の向こうで一瞬黙り込んでしまった。



それから小さく息を漏らしたのが聞こえた。






「史」



「・・・・・はい」



「どんなに忙しくたって、俺だって彼女の誕生日くらいは当日にちゃんと祝いたいよ」



「・・・・・希和」



「それは無理でも負担でもなんでもない。俺がしたいからするんだよ。史が素直に喜んでくれれば、俺は今からの仕事ももっと頑張れるんだけど?」




拗ねたような口調がなんだか可愛くて、私もふっと笑みが溢れた。




「うん・・・ありがとう。明日、すごく楽しみにしてるね」



「張り切ってオシャレしておいで」



「ん、わかった。お仕事頑張ってね」





ちょうどそのタイミングで希和が目的地に着いた為に、私たちは通話を終えた。






ーーー希和はすごく優しい。




それは付き合ってから5年が経った今でも、ずっと変わらない。



どんなに忙しくても誕生日やクリスマスといったイベントごとは忘れないし、仕事で会えない日が続いた分、会えた時にとことん私を甘やかす。



喧嘩だって一度もしたことがない。



それくらい私たちの付き合いは穏やかで順調すぎた。



だからもしかしたら本当は希和はどこか無理をしているんじゃないかって、ときどき不安に思うこともある。



私は希和が何より大切だから、私の為に自分を犠牲にだけはして欲しくなかった。











シャワーを浴びたあと、私は念入りにパックをしながら明日の洋服を選んでいた。




仕事に行く時はいつもパンツスタイルだけど、明日はやっぱりワンピースがいいのかな。いつもは下ろしている肩まである髪も、纏めていこうか。



いろいろコーディネートしているうちに、明日が純粋にすごく楽しみになってきた。





希和に会えるのは3週間ぶりだ。

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