第12話
「で?そんなお堅い職業の男性と、しかも出会ったのが職場でなんて、よくお付き合いにまで発展できたわよね?」
もう千家さんの視線は完全に私にではなく、三上さんに向いていた。
「それがね、私も全然知らないうちにそうなってたのよ。うちの会計士が木嶋さんっていう超イケメンだってことは知ってたんだけど、用があるのは社長にだけで、私たち社員と会うことなんてほとんどなかったし」
三上さんの言う通り、来社した会計士さんは社長室のある4階に直接向かう。
うちは小さな会社だから、経理関係はすべて社長とご自宅にいる奥様が行っていた。
ほとんどの社員は3階で作業しているから、会う機会がなかったのだ。
「じゃあなんで皆原さんだけ、その彼にお近づきになれたの?」
「皆原ちゃんはね、木嶋さんが来社する度にいつもお茶を持っていってたのよ。だから皆原ちゃんは会ってたの」
「えー、羨ましい!私もお茶運びたかったな」
「千家さん、会社違うでしょ」
「だけどそんな、2人きりとかじゃなくて社長もいましたし、その場で会話なんて数えるくらいしかしたことなかったんです」
私は首と掌を同時に振った。
会話と言っても"こんにちは"とか"いつもありがとう"とか、そんな挨拶程度だったし。
「えー、じゃあその木嶋さんは、その時に皆原さんに一目惚れしちゃったってこと?」
「ちが」
「多分ね」
一目惚れなんて、私はしてもらえるような特別可愛い容姿をしているわけじゃない。
けれど否定しようにも、すぐさま三上さんが言葉を被せた。
「皆原ちゃんが木嶋さんと付き合い出したのって、木嶋さんがうちの担当じゃなくなってからなの。木嶋さんが最後に来社した日に、木嶋さんがうちの事務所に忘れ物したのよ。それを届けに皆原ちゃんが追いかけていったんだけど、しばらくの間戻って来なかったの。だからきっとその時に何かあったんだと思う」
「・・・・・・・・・!」
三上さんが流すように視線を私に向け、にやりと笑った。
なんで三上さんがそれを知ってるの・・・・・!
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