第10話
「そうねー、この年齢で別れを選ぶのは勇気がいることだけど、今目を瞑って無理して結婚してたってきっと上手くはいかないだろうしね」
千家さんは三上さんの1つ上の31歳だ。
年齢とともに徐々に恋をする機会が減少していく中、確かに今から独り身になることはけっこうな勇気が必要なのだ。
「千家さんも結婚が遠のいたか」
「やだもうっ、はっきり言わないでよー」
「いいじゃない、生涯独身でも」
「絶対イヤー!私は結婚して、仕事も辞めたいのよっ」
千家さんは軽く泣き真似をしながら、蕎麦をすすった。
「ホント、身近に誰かいないかしら」
両サイドに座っていた2人が千家さんの背中を摩りながら、「だから今度合コンしましょうって」「次ですよ、次!」と慰めている。
「わかってると思うけど、うちの事務所にはこれと言ってめぼしい男は残ってないわよ」
「それを言うならうちだってそうよ」
「だから言ってるじゃないですか!社内はもう無理ですよ」
「じゃあやっぱ合コン?」
みんな口々に新しい出会いについての話で盛り上がり始めている。
私は1人、そんな輪の中に入れずにいた。
千家さんは美人だし、気が効くし。きっとその気になれば新しい恋人だってすぐにできるだろうけど。
"千家さんは本当にそれでいいんですか?"
"今でも好きなのに、一緒にいる未来を諦めてしまっていいんですか?"
"3年も付き合った相手なのに、そんな簡単に忘れられるんですか?"
そう強く思うのに、目の前で笑顔を見せる千家さんに今さらそんなこと・・・・聞けない。
「ね、皆原さんも行く?」
「へっ?」
「来週の金曜日の合コン。お医者さんだよ」
「いえ・・・私は」
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