第9話
"キッチン花子"は表向きは洋食屋さんだけど、和食から中華まで実は何でも揃っている。
味はまあそこそこだけど種類も豊富で値段も安いから、平日のランチ時にはすぐ満席になってしまう人気店だ。
私は新メニューである鯖サンドを頼んだ。
それぞれオーダーし終えると、女が5人集まれば当然の如く話は最近の恋愛事情になった。
「実は彼と別れたのよ。1ヶ月くらい前に」
そう切り出したのは千家さんだった。
「え!彼ってあの商社マンの?けっこう長く付き合ってたわよね?」
三上さんは前のめりになりながら突っ込む。
驚いたのは私と三上さんだけで、千家さんと同じ会社の2人はもう知っていたようだ。
「結婚考えてるって言ってなかった?」
「考えてたし、今年の誕生日にプロポーズっぽいことも言われた。それでお互い今後のことを真剣に考え始めてたんだけど」
「けど?」
「その考えを答え合わせしてるうちに、私たちってすっごく噛み合わないことに気付いたの」
千家さんの話に、三上さんと同じ角度に私も首を傾げた。
「彼は結婚しても私に仕事を続けて欲しい、私は辞めたい。彼は子供が3人は欲しい、私は産んで1人。この歳で3人なんて絶対ムリだし。彼は一軒家が欲しい、私は近所付き合いが面倒だからマンションがいい。彼は将来的に両親との同居を望んでる、次男なのに。
・・・・・・こんな感じで他にも色々とね」
息つく暇もないくらいの勢いで千家さんがざっと話し終えると、三上さんも私も同時に小刻みに頷いた。
「すごく好きだったし、今でも好きよ。でもお互いに妥協できない以上、結婚はやっぱり無理だと思った。だから私から別れようって言ったの」
千家さんと同じ会社の2人も、
「最初は今別れるなんて勿体ないって思ったんですけど、聞けば仕方ないかなって」
「そうだよね、話し合って全て解決できる問題でもないしね」
千家さんに同調した。
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