第9話

「年齢も30近くなってから、より演技に渋味が増してかっこ良くなったのよねー。ってか、私たちと同い年か。なんかそろそろ結婚しそうで怖いけど。


あー、絶対イヤ!」




「・・・何言ってんのよ、人妻が」



睦美は私と同期で、29歳。去年結婚したばかりの新婚さんだ。子供が出来るまでは仕事を続けるそうだけど。




「人妻だからよ!独身の俳優とかタレント見てキャーキャー言いたくなるのよ。あ、あんたはダメよ?ちゃんとリアルな男追っかけなきゃ」




「・・・そろそろ戻ろうか?銀行も寄りたいし」




立ち上がろうと椅子を引こうとした私の手首を、睦美がガシッと掴んだ。



「逃がさないよ?アナタ最近すごく怪しいんだけど?」



「・・・・・・・・・何が?」



「男」



睦美の口角がくっと上がった。





ーーー相変わらず鋭くて、嫌になる。

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