第5話 バカップルのきっかけ(彼氏編)

 この晩、昔の夢を見た。


 俺は魔人殺しの一族で生を授かった。


 魔人というのは種類にもよるが、人の悪感情を餌にして悪さをする寄生虫擬きだ。魔人は悪感情のためならなんでもする。絶滅させなければいけない存在だと、幼少期から教えられてきた。


 一族の任務は魔人を殺すこと。故に幼い頃から殺しの修行を受けてきた。他の兄弟はみんな死んでしまったが。


 跡取りの候補者が居なくなったことで俺は一族の後継者にも実の親から任命されている。


 許婚も幼い頃から大人によって決められた。有藤緑子である。正直、苦手である。けど一族の宿命ならば仕方ない。


 自由な恋愛。バカップルが羨ましい。そう思うと同時に妬みが来て、やがて存在自体が嫌いになっていた。



         ◇



「感情を奪う魔人討伐ねぇ。一番低級な魔人やん」


「そうだ。貴様に相応しいと思ってな。修行で培った力を存分に奮ってこい」


「低く見積もられてるな親父。俺は感情を奪う魔人より上級『妬みの魔人』を沢山殺した男だ。ちゃちゃっと捌いてくるよ」


 感情を奪う魔人をバカップルに差し向けたら自分が望む光景を拝めそうだなと馬鹿なことを思いつつ、俺は魔人殺し。


 俺は一族の役目を遂行するのみだ。


「にしてもなんで一番雑魚が指名手配されるまで放置されてたんだ?」


 俺は魔人が住んでいる付近に現着した。感情を吸い取られて廃人と化してる人々が沢山居た。


 これは思ったより手強そうだなと思いつつ、周りを見渡す。


 すると、ピンク髪ツインテールの女の子を発見した。手配書の内容とこの子を照らし合わせてみたら特徴が一致していた。


 この子が感情を奪う魔人か?


 万が一があってはならない。魔人は人間に擬態する。なので一度、話しかけみることにした。


 対話して、魔人だったら殺す。


「こんばんはーお嬢さ……ん」


 俺の声に反応して女の子が俺の方に振り向く。


 少し幼くあどけない印象がある。小柄で童顔。きっと笑ったら魔人の血肉で血塗られた俺が否定されてしまいかねない。


 なんというか、なんかもう。言葉を失うほど可愛い子だった。


「一目惚れした。付き合ってほしい!」


 俺は感情を奪う魔人の事など忘れてプロポーズしていた。



        ◇



 これが彼女と出逢ったきっかけ。


 彼女と出逢ってから度々使命を忘れそうになるが、早く魔人を討伐して父上に報告しなければ。あわよくば彼女と婚約する報告も出来たらいいな。


「よーし、アオたん起きてー! 朝だよー!」


 ふぅ、今日もいい天気。

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