第2話 バカップルと委員長

「はいはーい君たち~正座」


「あっはい」


 俺は無駄な抵抗せず、般若な顔をしている親友にひれ伏した。


「えっ、あたしも?」


 目の前でものすんごく不機嫌なオーラを出してる人は有藤緑子。


 親友にして幼馴染。そしていつも頭が上がらない風紀委員長である。


「君たちバカップルは生徒会でも問題になってるの。学校内で暴れ回ってるって。風紀的にも色々とアウトだし」


「んなバカな。俺たちのどこがいけないってんだ!」


「ねー!」


「全部だよ。詳しく言うと、お姫様抱っこで校内を駆け巡り、隙あればキスして、四十八区抱きついているところ」


 そういえば、そうだなぁ。それがどうしたって感じだが。


「頼むから客観視してほしい。君が嫌いなバカップルになってるから」


 うーん、そうなのかなぁ。


 そう他人に言われてから初めて自身を見つめ直すのも我ながらどうかとは思うが、遅きに越したことは無い。


 それにその訓練は幼少期からやってきた。すぐに答えを導き出せる。


 うん、バカップルじゃない。健全だ!


 委員長は手を額に当てたあと、とある機械を懐から取り出した。形状的にボイスレコーダー?


『おいお前ら! その噂を俺たちに向けて言っているのなら辞めてもらおう! さもなくば、いかに俺たちがバカップルなのか今ここで証明することになる!』


 なっ!?


「さっきの発言はなんだったんだ?」


 なんだと、まさか委員長に遅れをとるとは。本職として恥ずべきだな。とりあえず今は釈明しよう。


「噂を広めた奴らに宣戦布告の意味を込めて言った」


「宣戦布告って誰に?」


「ウーン、例えば噂を広める魔人とか?」


 そう口にした瞬間、モモのありとあらゆる場所から汗が噴き出てきた。あれ、もしかしてどっか地雷踏んだ?


「ダメだよ。絶対バカップルって思われてるって、逆効果だって。ていうか、よく公衆の面前でこんな事言ったね」


 ああ、言われてみれば確かに。委員長に言われて自覚したが、今思えば恥ずかしい事言ったな。


「あっ! アオたんが顔赤くしてる! 写真撮っとこ!」


 さっきまで嘘のように黙っていたモモが急にスマホのカメラを連写してきた。相変わらず大量の汗を吹き出しながら、震える手で明後日の方向を。


 ていうか眼もグルグル回ってるし、大分様子がおかしい! もしかして風邪、いや重篤な病気にかかったのか!?


「さっきからどうしたんだモモ! 具合が悪いのか、どっか痛いのか? 保健室で診てもらおう!」


 開口一番、俺はモモをおんぶして保健室へ向かった。手遅れになってはいけない。俺は廊下を疾風のごとくかけていった。

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